23人が本棚に入れています
本棚に追加
/201ページ
「ほざけ」
ーーお前の本質は犯罪側だーー
式の言葉に未来はぎくりとした。心臓は五月蠅いほど脈を打つのに血の気だけが引いていく、顔は蒼白になる。
「俺に、お前の仲間になれと」
ーーそうだ。こちらに来いーー
「笑わせるな。敵だった者を味方に引き込むとは、よほど自信がないとみえる。いいか、俺は誰にも従わん」
ーーお前はいずれ、妖魔だけでは足りなくなるーー
「だからとて、そっちに肩入れする義理もない」
ーーこちらにくれば、いくらでも殺戮を提供してやろうーー
未来は、ギッと蛾を睨んだ。
やめて。
ーー楽しいのだろう。殺すことがーー
「だからなんだ」
やめて。
ーー来い。こちらにーー
やめて。
「冗談じゃない。それに、もう遅い、お前は俺を怒らせた」
未来の手を握ったまま、二葉はもう片方の手を胸元に翳した。
ごうっと青い球体の炎が出現する。怒り狂いそうな二葉を未来は息を潜めて瞬きすら忘れ見た。恐怖が体を巡った。
「ただで済むと思うな」
二葉は炎に息を吹きかけた。小さな火の粉が飛び散る。
「狐粉」
ふわりっと散った火の粉は狐に姿を替え、小さな紙吹雪のように空を飛んだ。
「苦しめ」
火の粉の狐は宙を駆ける。
最初のコメントを投稿しよう!