第一章 1-1 熱中症

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「おい。さっさとしないと妖魔に常国の住人が食われるぞ。どうでもいいが」 「わかってるわよ」  常国は死者の国。つまり、地獄と呼ばれているところだ。閻魔大王が統治している。長い歴史上、まぁ、色々あったようで、昔の様に死者に罰を与え、苦しめる考えは改められ、すっかり法律は変わってしまった。  いま現在。常国は生前の罪は、お金で払われることになっている。なので働いて普通に暮らすのが日常だ。ただ、そこの住人は霊ってだけだ。 「──未来。そっち行ったで」 「わかってる」  目の前にいるのはスライムのような水アラと言う妖魔だった。 「おい。宿の近くに近づけさせるなよ。面倒だからな」  ムッカ。そう思うなら手伝ってよ。相方なんだから。 ──ここ常国もお盆時期の旅館は現世と同じ様に賑わっていた。 『今回の依頼は、旅館に現れる妖魔を退治することです』  エージェントの唐沢さんはそれは爽やかに簡単に言ってのけた。  星の宿は森に囲まれた旅館。1キロほど離れたところに、ようやく水アラを追い込み、暑い炎天下走り回る。 「森の中なら人も少ない。さっさと捉えろ」  いつものように命令する二葉にイラつく。自分は涼しい顔して腕を組み傍観しているだけ、こちとら1時間は走りぱなし……。
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