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「おい。さっさとしないと妖魔に常国の住人が食われるぞ。どうでもいいが」
「わかってるわよ」
常国は死者の国。つまり、地獄と呼ばれているところだ。閻魔大王が統治している。長い歴史上、まぁ、色々あったようで、昔の様に死者に罰を与え、苦しめる考えは改められ、すっかり法律は変わってしまった。
いま現在。常国は生前の罪は、お金で払われることになっている。なので働いて普通に暮らすのが日常だ。ただ、そこの住人は霊ってだけだ。
「──未来。そっち行ったで」
「わかってる」
目の前にいるのはスライムのような水アラと言う妖魔だった。
「おい。宿の近くに近づけさせるなよ。面倒だからな」
ムッカ。そう思うなら手伝ってよ。相方なんだから。
──ここ常国もお盆時期の旅館は現世と同じ様に賑わっていた。
『今回の依頼は、旅館に現れる妖魔を退治することです』
エージェントの唐沢さんはそれは爽やかに簡単に言ってのけた。
星の宿は森に囲まれた旅館。1キロほど離れたところに、ようやく水アラを追い込み、暑い炎天下走り回る。
「森の中なら人も少ない。さっさと捉えろ」
いつものように命令する二葉にイラつく。自分は涼しい顔して腕を組み傍観しているだけ、こちとら1時間は走りぱなし……。
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