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「走れ、止まるな。さっさとしろ」
これで3度目だ。さっさとしろと言うの。このやろう。
この水アラ、憎たらしいことに、石鹸のようにつるつると滑る。地面をスケートのようにしゃぁしゃぁと走って行く。
生憎、昨日雨なんか降ったもんだから滑りはとても、よろしかったようで。
「未来。左。おっと足元、通り抜けて行ったで」
「うぎゃあ。もう嫌。二葉も手伝ってよ」
「なぜ俺が手伝わないといけない。ちまに付き合って来てやってるだけありがたいと思え」
うきぃぃ。閻魔大王の命だから仕方なくなんでしょう。
一体どんな弱みを握られているのか、二葉は閻魔大王の命令だけは、嫌々ながらも聞く。
「とは言え、泣き言ばかり言うてられへんで。妖魔の餌は、人間の魂なんやからな」
「……」
そう泣き言ばかり言ってられない。食われ命を落とせば、未来永劫の死が待っている。つまり輪廻転生の和から外れ消滅してしまう。
未来の足元で駆け回る彩兄に目を落とす。
絶対。許さない。
彩兄の肉体を奪い殺し、そのうえ魂を栄養として食べた妖魔。彩兄はなぜか消滅は免れた。
「絶対。彩兄の体をもとに戻す」
と未来は彩兄に聞こえないように呟いた。
そのために退魔師になったんだから。
未来は怒りをあらわにして鋭く妖魔を睨み、手の中に意識を集中させた。金色の砂塵が集まりボール状にすると、手を振り上げて、憎き妖魔に投げつけた。
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