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「──妖魔は退治できたけど」
帽子も被らず。二葉が休ませてくれない。真夏の炎天下。水分も塩分も取ってる暇も無い。
となると。熱中症にもなるでしょう。
未来は右狐が持って来てくれた氷り枕に頭を沈めた。
「今日の暑さは尋常じゃなった。頭がまだクラクラする。ねぇ。彩兄もっともっと仰いで」
彩兄は仕方なさそうに、持っていた団扇に力を強めた。
「岐阜県の美濃市で40度やてテレビで言うてたで」
「おのれ二葉。人に気を遣うことはしないのか」
とそこに、ガチャリと自室の扉が開いた。お構いなしで彩兄は話す。
「半妖やからやろか。あの勝手さ。さすが300歳」
「違うね。あれは、ああゆう性格なんだよ」
「俺もそう思うわ」
未来と彩兄は頷きあった。
本当に、少しでいい。優しくしてくれないだろうか。
「さぁ。みーさま。熱中症にはコレがいいですよ」
「彩様も、今日は暑かったでしょう。どうぞ」
器用に前足を使ってジュースを未来と彩兄に渡す、白狐。
首に赤いリボンが結われているのが右狐。
首に青いリボンが結われているのが左狐。
白狐の神使だ。
昔。綾瀬家は神社だったらしい。地震で崩壊し火災で焼失したと聞く。そこで使えていたのが右狐と左狐。神社はもう無いが、そのまま綾瀬家で使えている。
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