第一章 1-1 熱中症

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 グラスに注がれた、しゅわしゅわと弾ける炭酸飲料。梅エキスと炭酸を割った手製のジュース。それをぐっと未来は飲み干した。 「みーさまは漬け物の類が苦手ですからね。キュウリの漬け物なら水分と塩分がとれて熱中症にいいのですけどね。みーさま食べて下さらないから、それに梅干しも嫌がって食べてくださらないし」 「うっ。あまり美味しくないもん」 「ですので左狐がタブレットで青梅と氷砂糖を買ったのです。それをジュースにしました。これなら梅でも飲めますね」  尾っぽを振ってニコニコしている神使。  どうやら褒めてほしいようだ。 「ありがとう。梅干しは苦手だけどこれなら飲めるよ」  ますます。尻尾をぶんぶん振り回し喜ぶ二匹。 「さあ。みーさま。これから、お出かけするなら、こちらも食べて下さい」 「おい待て、出かけるてなんや」  彩兄の小言は無視し、未来は右狐が出した小皿を見下ろした。  うわ。 「いま漬け物、苦手だって言ったじゃん。いらないよ」 「こちらはヨーグルトの漬け物です」  漬け物じゃん。  最近、右狐と左狐は迷惑なことに発酵食品にハマっている。 「おい。だから出かけるってなんや」 「ですが、ヨーグルトは、お好きでしょう」 「好きだけど……」 「おい。無視するなや。地味に心が傷つく」  右狐の目はキラキラと輝き未来を食べるのをしっかりと見ている。  だめだ。食べるしかない。  未来はひとかけらキュウリの漬け物を摘まんで口に入れた。  ぱくり。  ……。美味しくないな。 「うん。ありがとう」 「免疫力は食べ物からです。健康第一ですよ」  ああ。うん。  神使の気遣いは有り難いが、参ったな。漬け物が苦手なのはどうにもならん。
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