ゴールデンウィーク

2/4
前へ
/129ページ
次へ
「あっ、よし!」 純の問い答えず、志賀は車を左に寄せ、ハザードランプを点滅させて路肩に車を停めた。 次の瞬間、志賀はシートベルトを外し、純に覆い被さるように抱き着く。純の背中に手を回し、シートから引き剥がすように引き寄せてぎゅっと抱き締める志賀。 「えっ……夏哉…?」 戸惑う純の耳元で、志賀が耳に口づけて囁く。 「すげぇ嬉しい、ありがと純。でも運転してる時にそんな事言われたら、俺、嬉しすぎて事故るから…」 「あっ、ふふっ、なんだぁ、それでかぁ…」 「必死に車を停められる所を探してた。でも駐禁の車、多すぎなんだよ。今すぐ抱き締めたいのに、どんだけ走らせるんだよ…」 「ふふっ……顔、怖かった…」 「ごめん。集中してないとほんと、純の方、見てしまいそうで…」 「ふふっ、よかった」 「純、本当に内山にそんな事、言ったのか?」 「うん、言ったよ。内山さんにも驚かれたけど……でも私は、自分の気持ちと夏哉を信じるって決めたの。何があっても夏哉と離れないもん」 「ふっ、ふふっ、俺も離さないよ。純、俺だけを見てて」 「うんっ」 2人は見つめ合い、路肩に停めた車の中でキスをした。唇を重ね、舌を軽く絡めた後、唇を離すと志賀が言う。 「今すぐ家に帰りてぇ…」 「ダーメッ! このゴールデンウィークで、色々準備を進めておかないと」 「だってぇ……今すぐ純を抱きてぇんだもん!」 子供のように口を尖らせて、スネたように言う志賀。純は言い聞かせるような口調で言う。 「ダメです! そんな可愛く言ったって、やることをやってから!」 「ちえぇ……仕方ない、夜まで待つか…」 「はい。いい子ですねぇ」 微笑んでそう言い、子供にするように志賀の頭を撫でようとすると、その手を志賀が掴み顔を間近に寄せて言った。 「純、覚悟しとけよ。連休だし、今日は、寝かさねぇから」 純が答える前に志賀の唇が唇を塞ぎ、舌が深く絡まった。散々純の舌と口内を堪能した後、志賀は「行くか…」と渋々車を出した。 式場に着き、ウエディングプランナーの松井と打ち合わせをし、招待状を送り、結婚記念写真や衣装の話し合いをする。 実際に衣装部屋に行き、純のウエディングドレスを見て選ぶ。色んなタイプのウエディングドレスがあり、目移りする。 「うわぁ、これもいいなぁ…」 「ふふっ」 「あっ、こっちもいいなぁ……ねぇ、夏哉はどんなのがいい?」 「えっ、俺? 俺は、純が着るならどれでも似合うから選べないよ。純の好きなドレスを選ばないと」 「えぇ、そうかな?」 「そうだよ。だって出来るなら、ここにあるドレスを全部着てもらって、写真を撮りたいって思ってるもん!」 「それはさすがに無理だなぁ…」 「だろ? じゃ、純はふんわりタイプと細身のタイプどっちがいいんだ?」 「あぁ……そっか。まずはそれだね」 「うん。ゆっくり選べよ。時間はたっぷりあるし、今日じゃなくても何度も通って決めればいい」 そう言ってくれる志賀に、純はそっと近寄り耳打ちする。 「さっきは早く帰りたいって言ってたのに? ふふっ」 すると志賀は純の腰に手を回して引き寄せ、純の耳をカブッとかじり囁く。 「だってウエディングドレス姿の純、見たいもん。いいだろ?」 「ふふっ、うんっ。ありがと」 「うん、選んでおいで」 志賀が腕を離し、純は松井と話をしながらドレスを選ぶ。
/129ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2506人が本棚に入れています
本棚に追加