ゴールデンウィーク

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翌日、純は3種類のドレスの内1つを選び、披露宴の内容を書いた紙を出し、挨拶や余興の話をして、誰にしてもらうか決める。 「上司の挨拶は1課の課長か2課のマネージャーだよな。でもマネージャーの方が付き合いは長いし、俺と純の上司だったし、一度課長とマネージャーに話してみるよ」 「うんっ」 「皆に招待状を送ったから、余興に出る人も決められるな。やっぱ目黒先輩や吾妻先輩に頼むのがいいかもな」 「そうだね。あとカラオケとかしたいって言う人は歌ってもらって、楽しくなればいいな」 「そうだな。それと純は、両親に手紙だろ?」 「うん。手紙を書かなきゃね」 「俺さ、あれからずっと考えているんだ」 「あれから?」 「うん。父さんに病院を継ぐかどうか考えるって言ってから」 「あぁ、うん…」 「今1課で本当の不動産業を学んで、大変だけどやりがいを感じてる。不動産屋をする事が簡単じゃないっていうのも分かった。けどやっぱり、不動産屋をやってみたい」 「そっか。私もね考えていたの。もし夏哉が病院を継ぐ事になったら、医療の事を少しは勉強しないといけないなって」 「でも病院を継ぐのは、経営面でだから別に医療を勉強しなくても…」 「そうだけど、少しは知っていた方がいいんじゃないかな。でね、もし2課で久坂君と内山さんの2人が頑張ってくれたら、私、仕事辞めようかなって思ってる」 「えっ、辞める?」 「うん。私、病院の経営面を手伝おうかなって思ってるんだ。ご両親にはそのままの医院長と副医院長でいてもらって、私が経理に入って勉強するの。夏哉は不動産屋を立ち上げて社員を雇えばいいし、私は病院も佐世保電工も支えられるようになりたい」 「純……」 「ふふっ、いい案でしょ。これならご両親にも納得してもらえるかも知れない」 「純はそれで本当にいいのか?」 「うん。私はいいよ。だって夏哉と仕事が別々なのは変わらないし、別々になっても私と夏哉はもう離れないでしょ」 「うんっ」 「それに、ご両親を味方につけておけば、夏哉と喧嘩した時、強い味方になってくれる…かも? 知れないじゃない?」 「ふふっ、両親を味方につける魂胆か…」 「ふふっ、最強でしょ」 「まぁ、喧嘩しないけどな」 「ふふっ、だよね。私が何を言っても、夏哉はいつも怒らなかったもんね」 「まぁな」 「すぐに辞める事は出来ないけど、時期をみて決めるよ。それでご両親に話そう」 「うん。あ、でも純、一応、宅建は取ってて」 「うん、そのつもり」 そしてその翌日。2人はお色直しのカラードレスを選びに式場へ向かった。ウエディングドレスを決め、カラードレスを選ぶ。まずは色を決めて、その中から1着を決める。ウエディングドレスはふんわり可愛いものにしたから、カラードレスはボルドー色のシックなものにした。落ち着いた雰囲気で少し細身のドレスだ。 そのあと松井と挨拶や余興の事で話をし、ハネムーンの話をした。まだすぐに休暇は取れず、また日を改めてハネムーンに行く事にし、式場では結婚式と披露宴のみでお願いした。 結婚式の準備でゴールデンウィークはほとんど潰れたが、純と志賀にとって幸せな時間を過ごし充実した休暇だった。 休暇が明けた月曜日、2課に内山が戻って来た。皆の元に結婚式の招待状が届き、早速、純に祝いの言葉が贈られる。目黒と吾妻は泣いて喜び、内山は届いた招待状を持ち、純に尋ねる。 「桃井先輩、私にも招待状…」 「うん。内山さんにも是非来て欲しいなと思って。これからまた同僚だし、私達の後輩でしょ」 「はいっ、是非参加させてもらいます」 「うん、ありがとう」 続々と招待状の返信が届き、志賀は挨拶をしてもらえるよう1課の課長とマネージャーに頼んだ。すると課長はマネージャーに挨拶をしてもらうよう言い、マネージャーも快諾してくれた。純は目黒や吾妻に余興を頼むと、二つ返事で引き受けてくれ「楽しみにしてて」と言ってくれた。 仕事は落ち着き、2課では披露宴での余興の話を目黒と吾妻が中心となって話をしている。どうやら2課の皆で何か楽しませてくれるみたいだ。 そんな中、純は久利生が賃貸契約した部屋の鍵を受け取り、久利生に部屋を引き渡した。 「休暇もあって遅くなりましたが、いつでも入居して頂いても構いません」 「ありがとう。あっ、そうだ! 結婚式の招待状ありがとう。必ず行くから」 「ありがとうございます」 結婚する事を話した時、久利生が結婚式に呼んで欲しいと自ら申し出たのだ。純のウエディングドレス姿を見たいと言う理由だったが、それでも久利生ならきっと祝ってくれると思い、招待状を送ったのだった。 そうして1ヶ月、2ヶ月と過ぎ、ようやく7月7日七夕の日を迎える。
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