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願い事が叶う日
「新郎、志賀 夏哉さん、健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」
「誓います」
「新婦、桃井 純さん、健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」
「誓います」
「では、指輪の交換を」
神父がリングピローに並んだマリッジリングを差し出す。志賀がリングを取り、純の左手の薬指にリングをはめる。次に純がリングを取り、志賀の左手の薬指にリングをはめた。
「誓いのキスを」
神父の言葉に志賀は純のベールを持ち上げ、後ろへ回して純の顔を見つめる。
「純、愛してるよ」
「私も」
2人は満面の笑みを浮かべ、唇を重ねた。
式場内に盛大な拍手が沸きあがり「おめでとう」と祝いの言葉が投げかけられる。その拍手と祝福の言葉の中を、志賀のエスコートで2人はバージンロードを歩く。教会の扉が開きその場に立ち止まると、外には式場に入らなかった招待客がズラリと並び2人を拍手で迎えた。
披露宴会場へ移動し、式場のスタッフが進行を務める。打ち合わせ通りに挨拶や余興が進み、会食の時間になって2課の皆が酒を注ぎに来たり、話をしに来る。純のそばに久坂がやって来た。
「桃井先輩、ってもう桃井じゃないんでしたっけ?」
「あ、ううん。式が終わってから婚姻届は出すつもりだから、まだ桃井なの」
「そっか。じゃ桃井先輩、結婚おめでとうございます」
「ありがとう、久坂君」
「桃井先輩はやっぱすごいな。俺が守らなくても、先輩は自分で守る事が出来るんだから」
「ううん。久坂君の言葉に私は勇気づけられたし、安心もしたよ。ありがとう」
「俺の方こそありがとうございます。幸せになって下さい」
「うんっ!」
久坂と話したあとしばらくして、純の元に久利生がやって来る。
「結婚、おめでとう。想像以上に綺麗だね」
「ふふっ、ありがとうございます。お忙しい中、来て下さってありがとうございます」
「ううん。俺が招待してって頼んだからね、気にしないで」
そう言った後、久利生は志賀に声をかける。
「志賀君!」
「はいっ」
「必ず、彼女を幸せにしろよ!」
「はいっ、必ず幸せにします」
男同士の約束をして、久利生は席に戻って行った。
会食のあとお色直しがあり、両親への感謝の手紙を読んで、披露宴は無事終わった。
招待客を見送った後、純と志賀は着て来た服に着替え、昨晩2人で書いた『婚姻届』を役所に出しに行った。
7月7日七夕の日、2人ははれて正式な夫婦となった。
その帰り、純はふと呟くように言う。
「願い事、本当に叶っちゃった」
「ん? あぁ、初詣の時の願い事か?」
「うん」
「何て、お願いしたんだ?」
「いつまでも夏哉と幸せでいられますように。両家の家族が健康でいられますようにってお願いしたの」
「そっか。いつまでも一緒にいて幸せになろうな」
「うんっ。夏哉は? 何て、お願いしたの?」
「俺は……純と結婚出来ますようにって」
「ふふっ、じゃ夏哉も願い事叶ったんだね」
「まぁな。でもどうせなら、今日は七夕だし、笹に願いを書いて吊るせばよかった」
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