願い事が叶う日

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「あっ、そうだね。ほんとだ」 「まっ、欲張るのもよくないか。今で十分幸せだしな」 「うん。そうだね。これから七夕が結婚記念日になるんだね」 「うん」 家に帰ってから2人で祝儀の確認をする。招待客の帳面と照らし合わせながら、金額を書きお返しの参考にするのだ。祝儀袋の中で、ひときわ豪華な祝儀袋があり、持ってみると少し分厚い。 「えっ、久利生さん?」 久利生と書かれた祝儀袋を開けてみると、10万円が入っておりそれとは別に封筒が入っていた。 「なんだろう?」 志賀が封筒を持ち、純に向かって首を傾げながら言う。恐る恐る封筒をあけてみると、中に入っていたのは2枚の『宿泊券』だった。『マネジメントカンパニー』の傘下に入っているホテルや旅館の名前が書かれており、久利生の直筆のサインが入っている。 「これって……あのフランス料理店の『食事券』と同じで、ここに書かれているホテルや旅館ならこの『宿泊券』で泊まれるんじゃ…」 「まさか、これも永久券って事、ないよね…」 純がそう言うと、志賀は顔を引きつらせて言った。 「まさか……それはないだろ……ない…よな……」 「使ってみたら分かるって事だよね…」 「あぁ…」 2人は今後のハネムーンに、この『宿泊券』を使ってみる事にした。 翌週の月曜日からまた新たな1日が始まる。純は名字を志賀に改め、志賀 純として仕事を始めた。久坂と内山のサポートをしながら、純は1歩1歩前へ進む。 思い悩み難解な迷路で迷い、立ち止まった事もあった。進めば進むほど深く迷いこみ、新たな道を見つけそこへ進もうとした時もあった。何度も壁にぶち当たって、道を阻まれた時もあった。だけど迷子だった純を志賀が迎えに来て手を取ってくれた。2人の幸せのゴールに導くように、強く手を繋いでようやく辿り着けた、純と志賀の幸せのゴール。 2人で辿り着けたゴールの先には、これから2人の新たな道が(ひら)けている。信じて離さなかった手を、これからもずっと離さずに、2人で足並みを揃えて進んでいこう。 ただ1人だけを見つめ、1人だけを信じて。 「純、行ってきます!」 今日も志賀は店頭にいる純に声をかけ、2課の皆に見送られながら営業に出て行く。その後ろ姿をジッと見つめ、純は志賀を送り出す。 「夏哉、行ってらっしゃい!」 純の声に志賀は振り返り、満面の笑みで手を振った。 END
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