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夕方6時前、少し早いが志賀が帰って来た。インターホンが鳴ると、少し前に目覚めた直哉がバタバタと玄関に走る。そのあとを追って純も玄関へ急ぐ。鍵を開けドアを開けると、直哉は志賀の足に飛びついて叫ぶ。
「パパ! おかえりっ」
「おっ、ただいま。直哉」
片手で足にしがみついている直哉の頭を撫で、もう片方の手で純を引き寄せてキスをする。
「純、ただいま」
「おかえりなさい」
志賀は直哉を抱き上げ片腕に乗せると、玄関を入り靴を脱いでリビングに入った。
「ちょっと軽くシャワーしようかな。今日も暑かったから汗かいた」
直哉を下におろし、寝室に入ってスーツを脱ぐ。直哉はソファーに座ってお絵描きを始め、志賀は浴室に入った。純は出かける準備をして、志賀を待つ。
ちょっとお洒落をして食事に出かける3人。直哉はまだ2歳5ヶ月だから、高級なレストランだと気を使う為、少し気軽なレストランにした。ベビーチェアを借りて直哉を座らせ、お子様ランチを食べさせる。
直哉の食事は志賀がしてくれる為、純はゆっくり食事をする事が出来る。楽しそうに直哉に食事をさせる志賀を見て、純は微笑ましくて和む。
「ほんと、よく食べるようになったなぁ」
「うんっ。お昼も病院の1階にあるカフェのクリームパンを1個食べたんだよ」
「えぇ! あれ、結構大きいだろ?」
「うん。でも直哉、大好きなんだよねぇ」
そう直哉に話しかけると、直哉はニコッと可愛い笑顔で手を握り前に出して言った。
「グーすき!」
「ふふっ、ねっ」
「直哉のグーは、パパならひとくちだな」
満面の笑みでそう言って、直哉が握った小さな手をパクッと志賀が口に入れた。キョトンとする直哉。何がどうなっているのか理解出来ていないようで、ジッと志賀を見つめる。ゆっくり志賀が口を開けて手を口から出すと、直哉はニコッと笑った。
「ふふっ、びっくりした?」
「ひひっ」
笑う直哉の頭を志賀が優しく撫でる。
「ほんと、可愛いなぁ」
デレデレになる志賀を見て、純は微笑んだ。
「3歳になったら、保育園に入れるんだろ?」
「うん。そしたら友達も出来るだろうし、色んな事覚えて来るし、直哉が楽しいんじゃないかな」
「そうだな。運動会やお遊戯とか、見に行くのが楽しみだな」
「ふふっ、ドンドン成長していくね」
「あぁ…」
2人で直哉を眺めながら話していると、志賀がポツリと言った。
「純、そろそろ2人目を作るか…」
「えっ…」
志賀が純に視線を移し、優しく微笑んで言う。
「2人目、欲しくない?」
「欲しい…」
「だよな。じゃそろそろ、作ろっか」
「うんっ」
その夜、直哉を寝かした後、声を潜めて2人目の子作りを始めた。志賀は毎晩のように純に愛を注ぎ、純もその愛を受け止める。
そうして数ヶ月後、純の月のものが止まった。しばらく様子を見て、薬局で買って来た妊娠検査薬で検査してみる。トイレにこもって数分後、純は大きな声を上げた。
「夏哉! 出たよ!」
バタバタとトイレに駆け寄って来る志賀。
「ほら見て! 陽性反応のライン! 妊娠してるって!」
「やったぁ! 純っ! 2人目だぁ!」
「パパ? ふたりめってなあに?」
志賀が直哉を抱き上げて言う。
「ふふっ、直哉はお兄ちゃんになるんだよ。ママのお腹の中にもう1人いるんだ」
「おにいちゃん?」
「そうだよ」
「うれしいの?」
「うんっ! とっても」
「じゃあ、ぼくもうれしい!」
3人で純の妊娠を喜び、後日『志賀総合病院』の花村の元を訪れた。
「妊娠9週目ですね。おめでとうございます」
「ありがとうございます」
「直哉君、お兄ちゃんだねぇ」
「うんっ! ぼく、おにいちゃんになるの!」
「ふふっ、おめでとう!」
花村にそう言われ、照れくさそうに直哉は笑顔を見せた。
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