迷走中

4/7
2484人が本棚に入れています
本棚に追加
/129ページ
久利生を降ろしドアをロックして、純は久利生をマンションの出入り口に案内する。出入り口を入りエントランスを抜け、2人はエレベーターに乗った。操作パネルの12階のボタンを押しエレベーターが動き出すと、純は久利生に説明する。 「このマンションは15階建てになっていて、内見出来る部屋は、5階、10階、12階の3タイプになっています」 「そう。俺が言った部屋は?」 「この12階の部屋ですね」 クリアファイルに入れた間取りの紙を見せて言った。 「そっか。一応、あとの2部屋もあとで見せてもらってもいい?」 「はい、分かりました」 エレベーターが12階に着き、純が部屋へ案内する。店舗から持って来たカードキーで鍵を開け、ドアを開いて久利生を先に入れる。ドアストッパーでドアを開けたままにしておき、純は久利生のあとに部屋に入った。 真っ直ぐ廊下を進み、リビングに入る。純はリビングの入口に立ち、久利生があちこち見ているのを眺めながら待っていた。 「広いなぁ。それにここからの景色最高だね」 リビングから出られるベランダで、景色を見て振り返り久利生が満面の笑みで言う。 「はい。きっと夜景も綺麗ですよ」 「だよね。うん、いいね」 リビングに戻って来て、久利生はカウンターキッチンや2部屋ある部屋の中など細かく見て回る。時々、純は久利生の質問に答え反応を窺っていた。 「じゃ、次の部屋見ていい?」 「はい」 部屋を出て鍵をかけ、エレベーターに乗り10階の部屋へ向かう。リビングは少し狭くなるが2部屋の広さなどは同じで、キッチンは普通のキッチンになる。景色は同じく一望出来る。 「ふーん。あまり変わらないんだね」 「そうですね。リビングとキッチンが少し違うだけですね」 「うん、ここでも十分だな」 次の部屋は5階。ベランダから見える景色は一望出来るが少し変わる。リビングがもうひとまわり狭くなり、2部屋も狭くなる。キッチンは10階と同じ。 「ふーん。やっぱり狭く感じるね」 「そうですね。5階は1部屋の間取りが狭くなり、1フロアーにある部屋の数が少し増えます」 「あぁ、なるほどね」 「2階にはフィットネスジムやカフェなどが併設される予定です。3階から居住スペースになり、部屋の間取りはこの部屋と同じで9階まで続きます。10階からは広い間取りとなり、12階から15階はカウンターキッチンの間取りになります」 「ふーん。俺は12階の間取りかな」 久利生がそう言って微笑む。 「ありがとうございます」 純は軽く会釈して、気に入ってもらえた事に礼を言う。 「じゃ、店に戻って契約させてもらっていいかな?」 「はい」 部屋を出て純は鍵を閉め、エレベーターに乗り下りる。 「ここって、いつから入居出来るの?」 「来月の中旬頃になるかと思います」 「じゃ、今の部屋、解約の連絡しておいても大丈夫そうだね」 「そうですね。入居可能になりましたら、こちらからご連絡致します」 「うんっ」
/129ページ

最初のコメントを投稿しよう!