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「酷い! お姉さんは健太くんしか頼めないのよ? 視えない人のお供えは大体同じだから飽きちゃうのよね」
「てか、こんなにお供えあるなら太らない?」
「大丈夫。幽霊だもん。でも健太くん、デリカシーないねぇ」
「あったら幽霊のお姉さんの話し相手してる暇ないでしょ?」
「私としては有難い!」
俺はお姉さんが堪能した紅茶に口をつける。置いていってもこの場所が散らかる気がして気分が悪いし。
「でもなんで成仏できないんですかね? お姉さん、未練なさそうだし」
「未練か……。未練ならあるよ。でも健太くんとこうやってお話してるのも楽しいし」
「この関係はいつまでも続きませんよ。高校卒業したら、この道通らなくなるし。俺の時間は進むから」
お姉さんは寂しげに笑う。
「そうか……。そうだよね……。健太くんに何かできるとは思わないけど、お姉さんの未練はね、実は事故にあった日、ずっと大好きだった人に告白してOKもらったの。その人がまだお参りに来てくれないの」
ズキリと胸が傷んだ。お姉さんに恋心など抱いても叶わないのははじめから分かっている。それでも男の話など聞きたくなかった。
「ごめんね。こんな話……」
「名前は?」
「私は何も……」
「男の名前を教えてくれ。必ず連れて来る」
「いいの。来ないってことは、そういうことだから……」
「そんな訳あるか! 自分が選んだ男を信じろよ! お姉さんとは短い付き合いだけど、人を見る目があることくらい分かる! 必ず連れて来るから教えてくれ!」
「ありがとうね……。でもいいの……」
お姉さんはそう笑ってフッと消えた。
「逃げんなよ……」
そこから俺は帰ってから事故に関しての情報をスマホで集める。お姉さんの本名に住所に事故に関してのSNSの情報。恐ろしく細かなことまでスマホで判明してしまう。
そこにはお姉さんのアカウントもあった。最後の投稿が告白に成功したというものだった。
「モテるんじゃなかったのかよ……」
喜々とした喜びの投稿についたコメントにはご冥福を祈るコメントが多数。その中に俺は見つけた。
「ごめんなさい。君を守れなかった。せっかく告白してもらったのに」
こいつだと思った。こいつであってくれと思った。俺はDMを開く。
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