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『いきなりの連絡すいません。俺は事故現場の近くに住むものです。突然に変なことを言いますが俺は霊が見えます。雪菜さんの霊が告白した彼氏さんに会いたがっていました。一度、事故現場にお参りに足を運んでくれませんか?』
ままよと送信すると返信がすぐにある。
『君は雪菜と話せるのでしょうか。それなら君と一度会って話をしたい』
俺はすぐに了承する。
翌日、俺は学校を休んでお姉さんの彼氏さんと会うことにした。
指定された喫茶店に向かう。
そこにいた客は若い男一人。その人以外にありえなかった。
「拓人さんですか?」
「君が健太くん?」
「はい」
「座ってくれ」
俺は促されるままに向かい合って座る。
「飲み物は?」
「アイスコーヒーで」
スマートな男だった。身なりも綺麗だし、髪も清潔感がある。
「俺は雪菜の好きだった紅茶を飲んでいるんだよ。未練がましいが」
その言葉だけで充分だった。お姉さんを忘れた訳じゃない。
「逃げているんですか?」
「うん。逃げている。恋人になったばかりの彼女が亡くなったことを受け容れられない。本当は生きていて、ひょっこり顔を出すんじゃないかと」
俺のもとにアイスコーヒーが運ばれて店員が下がっていく。
「雪菜さんは未練があるそうです。あなたがお参りに来てくれないと」
「そうだよな……。怒るのも当たり前だ」
「雪菜さんは怒ってません。俺と話すときは楽しそうです。暇だからと俺を話し相手にして」
「そうなのか……。楽しそうに……」
拓人さんは俺の顔を真っ直ぐに見つめるから俺も真っ直ぐに見返した。
「お願いします。事故現場にお参りに行ってください。何ならこれからでも。拓人さんに視えないなら俺が通訳になります。お願いします」
俺は頭を下げる。下げて当たり前だ。お姉さんのためなら何だってやる。
「分かった。まずはそれを飲んでくれ。雪菜は食べ物や飲み物を粗末にするのは好かないから」
「ありがとうございます……」
胸が痛む。分かっている。俺はライバルにだってなれやしないんだ。分かっている。
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