第十章 戦いの終わり

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第十章 戦いの終わり

  第十章 戦いの終わり 「お前だけは絶対にゆるさない!」  むねに穴のあいたイルゼを抱きしめながら、おれはシニガミ・アキラに怒った。 「安心しろ。すぐにあの世で会わせてやる」  シニガミ・アキラが笑って、シンノヤミノカタナをかまえた。 「お前のカタナでは、おれに勝てないぞ」 「そんなことは、どうでもいい!」  おれはイルゼを床に置いてからヤミノカタナをかまえた。  ちなみに、シンノヤミノカタナとは真のヤミノカタナで、おれが使っているヤミノカタナはコピー品だった。ちなみに、おれのヤミノカタナは師匠が作ったもので、ヤミの力を人間でも使えるように力を弱くした物だった。(第八章でその真実が分かります) 「お前が使っているヤミの力もヤミノカタナも、本当のダークモンスターの半分より下の力しか出せないのだ。なぜか分かるか?」 「なぜだ?」 「お前が人間だからだ」  悔しいけど、シニガミ・アキラの言うとおりだ。  人間のままだとシニガミ・アキラには勝てない。 「くそ、一体どうすればいいんだ?」 「ぺー、これを使って!」  部屋の入口の方まで来ていたライザが何かを投げてきた。(ライザは第七章でイルゼに負けて人間の味方になっています。ちなみに、ライザもかわいいです)  手で受け取って見てみると、黒い液体が入った注射器だった。 「なんだ、これは?」 「それはダークモンスタードラッグと言って、打った人がダークモンスターになるドラッグよ!」  そんなの使って大丈夫なのか不安だったので、「使って大丈夫なの?」と、おれはライザに聞いた。 「大丈夫よ!」  大丈夫みたいなので、おれはダークモンスタードラッグを打った。 「ウオオオオオ!」  体の中から力がいっぱい出てきておれはダークモンスターになった。さっきの十倍くらいの力になったので、心の中でシニガミ・アキラに勝てると思った。 「フハハ、おろかな人間め。ダークモンスターに無理矢理なった人間は無事ではすまないぞ」  ダークモンスタードラッグは大丈夫じゃなかったみたいだけど、おれは本当に怒っていたので、命をぜんぶ使ってでもシニガミ・アキラを倒そうと心の中で決めていた。 「行くぞ、クソヤロー!」  おれは怒ったままシニガミ・アキラに走っていった。  カキン! カキン! ヒュンヒュン! シュン! ブワ! ドゥン! フワ! バキバキバキ! ドカーン! カキン! カキン!  おれとシニガミ・アキラは互角の戦いだった。 「もう少しでお前を殺せるぜ、シニガミ・アキラ!」 「フフフ、それはどうかな?」  シニガミ・アキラが笑って、同時におれはガクンってなった。 「効果が切れてきたようだ。言っただろ、ドラッグは危険だって」 「確かにドラッグは危険だ」  だけど負けるわけにはいかないので、おれは立ち上がった。 「次で最後だ、シニガミ・アキラ!」 「かかってこい、ぺー!」  二人でにらみあって最後の戦いになった。  ヒュン! バッ! ズバッ! 「ぐわあああああああ!」  おれに切られたシニガミ・アキラが倒れた。 「なんで切られたんだ、おれは?」 「これが人間の力だ!」 「そうか、これが人間の力か」  と言って、シニガミ・アキラは死んだ。  やっと全部のダークモンスターをたおしたけど、おれは嬉しくなかった。イルゼのむねに穴が開いているからだ。たぶん死んでいる。 「大丈夫よ!」  悲しくて泣いていたおれに、ライザが言った。 「どういうことだ?」 「私とイルゼはもともと同じダークモンスターで、色々あって二人になったのよ。だから私と合体したら、イルゼは生き返るのよ」  本当に大丈夫なのか不安だったので「本当に大丈夫?」と聞いたら、ライザが「本当に大丈夫よ」と言ったので本当に大丈夫だと思った。  だけど、そうしたらライザは消えてしまう。 「消えちゃうけどいいの?」 「いいのよ。私とイルゼは元に戻るだけだから」 「じゃあ、お願い」 「その前に」  と言って、ライザが急におれにキスしてきた。 「なんで?」 「ぺーのことが好きだったの。だからキスの順番だけはイルゼに勝ちたかったのよ」  と、ライザが泣きながら言った。  おれも泣いた。 「じゃあね」  と言ってライザはイルゼと合体して、イルゼの体が光った。 「ううう……」  生き返ったイルゼが目を開けた。 「なんで私は生きているの?」  元気になったイルゼにおれは説明した。 「ライザはいなくなっちゃったんだね。とっても悲しいわ」 「おれも悲しいよ」  イルゼが泣いた。  おれも泣いた。  ライザにキスされたことはひみつにしておこうと思った。 「とっても悲しいけど、これでみんなを救えたわね」 「ああ、おれたちのおかげだ」 「これで学校に帰れるわね」 「ああ、学校に帰れる」 「よかったわ。私、学校が大好きなのよ」 「そういえば、イルゼに言っておかないといけないことがあるんだ」 「なに?」 「おれ、実はお前のことが」 「フッフッフ、まだ戦いは終わりじゃないぞ」  部屋の入り口に立っていた謎の男が言った。 「お前は誰だ!」 「ダークモンスターの本当のボスのファイナル・ジョニーだ」 「なんだってえええええ⁉︎」  おれは人生でいちばんビックリした。 「シニガミ・アキラみたいなザコを殺したくらいで調子に乗るな」  おれは調子には乗っていなかったので、「調子には乗ってねえよ!」と言って、怒った。 「お前が怒ってもぜんぜん怖くないぞ。ダークモンスターは人間の心のやみがエサなんだ。暗いことを考えている人間がいる限り、おれたちは強くなり続けるのだ」 「人間がみんなポジティブだったら、お前らはいないってことか?」 「そういうことだ。それがおれたちのひみつだ。じゃあな。明日からもっと大変だぞ」  と言って、ファイナル・ジョニーは笑いながら帰っていった。 「どうやらまだ終わってないみたいね」 「そうだな」 「ところでさっきは何を言おうとしていたの?」 「忘れろバカ!」  おれは告白しようとしていたことがバレるのが怖かったので、大声で言った。 「なにそれ!」  イルゼが怒ってほっぺたをふくらませた。  おれはダークモンスターをぜんぶ殺してから、イルゼに本当の気持ちを言おうと心の中で思った。  おれはまっすぐにイルゼを見つめて言った。 「おれたちの戦いはこれからだ!」  イルゼは笑いながらうなずいて「うん!」と言った。                                                 END
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