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第十一話 水餃子
その頃、エル様のお城では残っていたC様が、客間や、メイド長の部屋などを片付け、すべてをとある部屋へ集めて調べておいででした。
彼は、とても忙しくそのような時間はありませんが、部下が成長してくれているのでそれを整理しています。
その違和感に気が付くのはもう少し後になりますが、今は、二人の王子が無事に戻ってくるのを祈るだけです。
「母様、ここです、ここ!」
「うわー、中が見える―、兄様、見て、見て」
「中が見えるのですね、すごい、これ全部パンなんですか?」
「はい、甘いものから、しょっぱいものまでございます」
「母上、叔父上が下さったあのパンもあるのでしょうか?」
第一王子の奥方様と王子様二人をつれ、スープ屋へ参る途中、パン屋へ行きたいといわれ、こうしてお連れしたところです。
「カレーパンと言う物があると聞いたのですがあるのでしょうか?」
「残念ですが、カレーパンはここでは作っていないのです」
「ではどこで?」
あれは教会の側のファーマーというところで、スープ屋のカリーの日に限定で出すのです。
残念。
「母様、中には入れないのですか?」
「入れますよ、では中でパンを買いましょうか?」
わーという王子たちは中へ入りました。
三人は目を丸くしておいでです。
そして私が手にしたトレーと、トングに非常に興味を持たれ、自分でもされますかと尋ねると、するとすぐに返事が返ってまいりました。お二人に渡すと、カチカチとトングをならし、パンを覗いてみております。その姿はなんとかわいらしいものでしょう?
これはどんなパンですか?と聞きながらトレーに乗せて行かれます。あまりの多さに、明日も来ませんかというと、いいのですかと目を丸くなさっておいででした。
結局、食べる分だけにして三個ずつ、それも種類の違うものをトレーに乗せておいででした。
そして、スープ屋へと参ります、前もって頼んでおいたので、二階へと案内してくださいました。
一般の方々と一緒に並び、わくわくなさる様子はどのおこさんもご一緒です。
さすがにトレーに乗ったものは運ばせていただきました。
「母上のは、辛いのですね?」
「そういわれていましたね?食べてみますか?」
「いいえ、明日も来るのであればその時で」
奥様はチゲスープをお二人は豚汁を頼まれました。パンを食べたいので、半分にしていただきました。
「ふー、フー、熱い」
「おちついてゆっくりね」
「お城ではどうして熱いものはいけないのですか?」
「いけないんじゃなくて、毒見をするからどうしても冷たくなるのよ」
「じゃあ、スープ屋をお城に呼ぼう、そしたら熱いものが食べられるね」
「でも叔父上の所も熱いものが出てくるよね」
「そうね、お父様は、みんなの安全を願ってそうしているの、ここではちゃんとしてくれるのね、うれしいわ」
そうですね、熱いものもごちそうだと叔父上が行っていたのがよくわかります。
「父上も早くお帰りになってくれればなー」
「その時は、料理長が腕によりをかけ、スープ屋に負けないものをお出しいたしましょう」
「うん、楽しみにする!」
「プハ~、おいしかったー」
「もう食べたのか?」
「うん、帰ったらパンを食べるからね、少ないのにしてよかった」
「ははは、そうだな」
なんともお優しいお子様にお育ちになられたものです。
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