第十一話 水餃子

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どうぞこっちです。 もしもがあってもいけないので私だけが行きます。みんなには寝るように言ってあります。 一階、食堂の奥、明かりは油です。 「どうぞ」 「失礼します」 「あなた?」 暗くて、どこに何があるのかもわかりません。 やっと人の顔がみえました。 誰? 見習いですがシスターです。 それはすみません、こんな格好で。 おきようとしたのを止めました。 話そうとして咳き込みました、落ち着くと大丈夫そう。ただ彼女も青い顔です。 「あの?窓は無いのですか?」 お客様の部屋にはあるがここには無いそうです。 向こうはキッチンですよね、そのドアは? 受付です。 「ここじゃゆっくり休めませんね」 「ですが」 今客室は空いています、移しませんか、窓が開いて暖かい部屋へ。 奥様はいいといいましたが、だめですというとご主人は奥様を抱き上げ、行きましょう、明かりをお願いしますと二階の階段のすぐそばの部屋へ入りました。 月明かりで明るい部屋、そこで奥様を見させていただきました。 「いつから調子が悪くなりました?」 二ヶ月前だという。 「実は」 ご主人はこんな話をなさいました。 一ヶ月ほど前、男性と女性、子供二人の家族を泊めた。 まるで隠れるようにあたりを気にしていた男性は私と同じ黒髪だった。 ふむふむ、ん? 一泊して朝早くに出て行くと、すぐに兵士がやってきて、彼らを探しているようでした。 「私たちの店にはいろんな人が着ます、ですから知らないと言ったんです」 兵士は来なくなりましたが、うわさが立ちました、盗賊一味が泊る宿だと。 客足はすぐに落ち、彼女は調子を崩し寝たきりに。 でも、熱も咳もさほど無い。 「食事は取れてますか?」 「それがあまり、むかむかして食べたくなくて、水も飲みたくなくて」 「吐き出したりした?」 今は無いという。 後何か無い? だるさとか、頭が痛いとか? だるさはあります、お腹も重いから動きにくくて。 お腹? ええという奥さん。 ちょっといい? 布団をめくり、脚を折って、お腹の回り・・・ん?…… んんん? 「お子さんはいらっしゃいますか?」 「いいえ?」 私は奥さんの耳元で、ねえ、月のもの来てる? と聞きました。 目を丸くしました。 「ガイルさん、お湯をください、後、女の子たちを呼んできてください」 「は、はい!」 「ダーメ、お湯沸かしておいて、使ったから」 「本当に病気じゃないんだな?」 「大丈夫よ、邪魔、邪魔」 「邪魔にするなよ」 結局男の子たちもおきてきました。 お茶を入れてくれるそうなのでお願いした。 「赤ちゃん?」 「うん、たぶんね」 明日の朝、産婆さんを呼んできてもらいましょう。そして、安心して眠れるように、まずは食事、水餃子なら入ると思う。食べて、体を拭いて、着替えて、暖かくして寝ましょう。 ご主人も気になるところでしょうが休んでください。ここはどーんと構えて、病気ではないと思うので、明日はっきりするまで私たちに任せてください。 水餃子はおいしいと少しだけですが食べてくれました、温かいお茶も飲みました。 ご主人はそれでも眠れない夜となるでしょう、みんなには明日ちゃんとした事がわかってからにします。
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