第十二話 あつあつ焼きショウロンポウとボルシチ

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「ちわー、パン屋です、頼まれたモノお持ちしました」 「おはようさん、牛乳と肉、骨を持って来たぞ」 「おはようございます、野菜を持ってきました!」 「はーい」 お客様の中にはまだ日が昇らないうちに出でる方もいられます。 「これは朝食代わりに、早めにお食べ下さい、本日は誠にありがとうございました」 「へえ、パンか、いただくよ、また帰りよらせてもらいたいんだがな」 予約です、ありがとうございます。 宿泊客は上々です。 みんなもおきて着ました。 村長の奥さんは心配していますが、今日を乗り越えるまでは我慢です。 お客様と同じ朝食をとってもらいます、この味を覚えていただきます。 「ママ、このパンおいしい!」 「本当ね」 「お姉ちゃん、それ、赤いの」 「はい、はい、これ?もう落ち着いて」 楽しそうで何より。 朝食はパンに玉ねぎのコンソメスープ。厚切りハムのロースト、茹で卵、サラダを三種類。飲み物数種類。 お好きな物をトレーに乗せ、お好きな所に座ってゆっくりお召し上がりください。 テーブルには、バター、自家製ジャムが二種類、塩、こしょうが置いてございます。 「はー幸せ」 「またこよう?」 「うん、またよらせてもらおう」とお客様も満足して帰られました。 その日の御昼の営業もものすごいことになりました。ただ私だけは営業が始まると少し離れ部屋にいます。 「やはりそうですか……」 宝石は、北にある森の側、冒険者たちでもゴロツキどもが集まり、魔物を取りつくしてしまい、今はいい物はさほど手に入らなくなったそうです。そこで、宝石を高値で引き取るといううわさを流しここに人が流れるようにしたと言う訳でした。 やはりエ―ドが深くかかわっていたようで、王子たちが死んだというのも今知ったというのです。 「だがなジョゼフがつないでいた教会連中が次々来なくなって、アイツはだいぶ焦ったんだろうな」見習いを置いて動こうとしたらしい。まあそれもつぶされてしまったのだけど。 「宝石類はやはりあんたが言っていた通りメルクの教会に行くようになっていた」 「ただそこに行くまでに一度王都のシスターやブラザーじゃなくグットマン経由になっているというのも突き止めたが、ジョゼフ、アイツはこの村で偽名を使っていたから、これも本当かわからないという。 マストール・マドルエル。 「ああこの方ならもう我々の手の中におります、彼にはまだやってもらわなければならないことがあるので、そうですか、ありがとうございました。それで、罪人は?」 カルクへ今日にでも送るそうだ。 逃げられないように頼みますね。 任せてください。 「私も行ってきます、その間なんだが」 「奥様達はここでお預かりします、後はお願いします、村長」 私達も明日には立ちます、どうかメルクが入り込まないように、よろしくお願いしますね。 シスターたちには、動いていただかなくてはいけない事が山積みで、応援を頼むそうです。 村はいちからやり直ししなければなりません。 まだどこに何がいるかわかりませんからね。 ブラム亭のご主人、奥様、それと村長の奥様リリーには今後のことを朝食のときに話しました。 リリー様は特に、人前に出ないように、村長が帰って来るまで我慢してもらうように話しました。 お子さんが狙われるより一番リスクが高いからです。 そしてお二人には、カルクから応援が来てくれるので、それまでなんとか頑張るように話しました。 子供たちはうまく使ってください、ただし、食べ物を扱っているので、お風呂にはいること、それと制服に着替えさせる事だけは徹底してください。 スープ屋は無くなってもレシピは残しました、料理上手なお二人ならやって行けます。 温泉の道具は行商人が持ってきてくれます。 お二人は、私たちのグループへぜひ入れてほしいと頭を下げてきました。 「いいのですか?」 「はい、私達も、クリバヤシグループに入れていただければ」 私達の理念は未来の子供のためにです。子供たちに伝えなくてはいけないこと、それは生きる事。 戦争なんかに負けないで生きてほしい、そしてそれを守るのは私たち大人です、それが出来るのでしたら、加盟店として認めます。 「お願いします」 私はブラム亭と提携を結びました。
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