何億光年も経てば忘れかけてしまうベテルギウス的な話

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そう言われて僕は球場に足を運んだ。 「広いんですね。球場って」 僕はお登りさんのようにキョロキョロして辺りを見渡す。 「お前、巨人ファンじゃねえのか、つまらないの」 そう勝手なことを言って先輩はすねてしまった。 一回の裏、巨人の投手はボコボコに打たれて7点のリードを許してしまう。 「あ~あ、やってられね。後輩はファンじゃね〜し、巨人は負けそうだし。 何しに来たんだか」 とビールを煽りだらしなく椅子に座っている。 『ピッチャーの交代をお知らせします。ピッチャー、うさ耳のウサ子、ウサ子』 うさ耳! 一瞬耳を疑ったが登場した小柄な女の子はこの間コスプレのうさ耳の女の子だった。 「やれー、頑張れー、打てー」 先輩はすっかりビールで出来上がってしまい仰向けになってふんぞりかえって寝てしまった。 僕は先輩の挙動など気にせずウサ子の第一投に注目していた。 ウサ子は耳にボールをあてたと思うと『ぴょん』と耳を曲げてボールを投げた。 ふらふら〜っと宙を漂うようにボールは打者の方に向かっていく。 あちゃ〜 目も当てられない。バッターにとってはこれは打ち頃の球だろう。 1分程かかって打者の手元まで来た。当然ホームランを狙ったフルスイングは、カスリもしなかった。 打者は勢いよく振った反動で尻もちをついている。 「ストライーク亅無情にも審判は右手を上げ 宣告する。 ウサ子は鼻の下を指で当てて自慢気に打者になにか言っている。 「ムーンライトボールよ。打てるものなら打ってみてね亅
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