何億光年も経てば忘れかけてしまうベテルギウス的な話

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ウサ子は自信満々に投げる。 どう見たって打ち頃のハエが止まりそうな球だけどバットに当たらない。 球がまるでバットを避けるように動いている。まるで無重力。無重力!?ムーンライト。 月とウサギ、うさ耳のウサ子。 僕は何かを思い出しかけたが先輩のイビキがうるさくて思い出せない。 それにしても、この試合はいつになったら決着がつくのやら…。 夜2時の丑三つ時、観客は誰一人帰ろうとしなかった、というより何者かに支配されて動けない。 月明かりの中、催眠術にかけられたように自分の意志で動いていない様子の選手達。 「た、タイム」 この拉致の空かない試合に僕は打開策を考えざるを得ない。 「代打、俺」 もう監督は正気でなくウサ子が放っている術に掛かっていて目も虚ろだ。 代打、俺。 こうでもしなければこの試合は永遠に終わらないような気がした。 「待ってたわよ」とウサ子が言う。 「俺もだよ」と負けじと返す。 そう言っといて身震いがした。 そう、自分はこの瞬間を待っていたのか!? 何故? 思い出そうとすると頭が痛くて韓流ドラマのようだ。 「ねえ、あなたがもし勝ったら、好きなようにしていいわよ」 好きなように、好きなように好きなように好きなように……。 「あ、ああ。好きなようにさせてもらうさ」 俺は何をしたいんだろう。 自分のやりたいことって、とにかくこの今ある状況を解決したい。 これでは野球をするという名目のウサ子に球場で軟禁されてるのも一緒だ。
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