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 しかし、もうこれ以上SNSに依存するのはよそう、と、凛人に決意させることが起こった。  はちみつを使用した簡単デザートのレシピに、質問コメントがついたのがきっかけだった。 『1歳を過ぎたばかりの娘ちゃんがいるのですがはちみつ抜きでも大丈夫ですか』  質問の最後には、なぜかかわいい絵文字がついていた。  大学生の凛人には『1歳』というワードと『はちみつ』がどうやったら結びつくのか全く理解できず、グーグル先生で検索した。  すると、一歳未満の子どもにはちみつを与えるのは厳禁だということがわかった。  しかし、一歳を過ぎれば与えてもよいとも書いている。  さらに検索結果を読み進めると、一歳を過ぎた子どもにはちみつを食べさせることに不安を覚える親がいるとわかった。 「まじ知らねーし! めんどくさっ!」  凛人は突っ伏して叫んだ。  自分の子どもにはちみつを食べさせたくないなら、作らなければいいだけの話。  こっちからお願いして食べてくれなんて、神に誓って書き込んだことはない。  そっちが勝手に見て、勝手に凛人のレシピで作っているだけじゃないか。  しかもだ。質問者はあきらかに凛人より年長者だ。  凛人より長く生きているくせに、何を思って、社会経験もない大学生にくだらない質問をしているのだろう。  凛人が大丈夫だからはちみつのレシピで食わせろと返したら、その通り自分の子どもに食べさせるわけじゃないだろう。  無料で公開しているレシピに、どうしてそこまで期待できるのか。他人の子どもに対して、凛人は責任なんか持てない。  質問の最後につけられた絵文字が、自分で何も調べようとしない質問者の、無意識の悪意を表しているように見えた。  それ以降もフォロワーが増えるのに比例し、フォロワーやそれ以外のユーザーから、アレルギーがある食品の代用や、苦手な食品抜きで作ってよいか等の、返答に困る質問が書き込まれることが増えた。
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