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どれくらい気を失っていたのか。
ゆっくりと回復する俺の視界に、日の丸がついた大型ティルトローター機が、ホバリングしているのが見えた。
航空自衛隊のオスプレイが、何本ものワイヤーロープでありえない存在を吊り下げていた。
幻覚じゃなかったんだ…
それは本当に、人の十倍以上の大きさがある裸女だった。
タングステンのロープでがんじがらめにされ身動きできずにいるが、血走った目は眼下で動きまわる小さな人間たちを睨みつけている。
長い黒髪をなびかせながら、巨大な裸女はどこかに運ばれていく。
俺はぼうぜんとそれをながめた。
迷彩服の男たちが、崩壊した校舎屋上の瓦礫をとりのぞく。
赤い髪が見えた。
「れ、レッカ!」
俺はレッカに近づこうとしたが、身体が思うように動かない。
「おっと」
転びそうになった俺を支えてくれたのは体格のいい男。
くわえタバコにアゴヒゲのその風貌は、眼帯をすればそのまま某ゲームの主人公であり、自衛官と言うよりは軍人だ。
「小僧、じっとしてろ」
「レッカが」
レッカの全身が見えた。
「うわあああああああああああ!」
その両脚は無残につぶされ、ちぎれてうしなわれていた。
俺は何度もレッカの名を叫ぶ。
大切な幼なじみの目が開くことはなかった。
これが後に、『特異災害ゼロ号』と呼ばれる事件だ。
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