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化粧なおしがおわったと思ったら、今度はスマホをいじりはじめる。
「なあ、せっかくなんだからさ」
「ええ?」
用意した曲は趣味が合わない。ラジオは聴かない。テレビもつまらない。
海を見て喜んだのは最初の五秒だけで、以降だまって手鏡かスマホを見るばかり。
「せっかく来たんだから景色みるとか」
「は? 景色なんてかわりばえしないし」
「だからってさ」
「だったらなんかおもしろい話してよ」
くだらない言いあらそいをして、沖であわ立つ白波に車中のふたりはまるで気づかなかった。
姿をあらわしたのは、特異災害もしくは、徘徊する災害と呼ばれる、超巨大生物だ。
姿は巨大なタコ。
ぶよぶよの胴体には、人の顔のようなものがうかんでいる。
タコは巨木のような八本の腕をくねらせ、海岸沿いの国道150号を走行中のヴェルファイアにおそいかかった。
タコの形をした人なのか、人の顔を持つタコなのか。
体長20メートルを超える化け物タコは、触腕で黒のヴェルファイアを掲げ、海にほうり投げた。
「特異災害出現!」
駆けつけた警官が無線にむかって、まるで怒鳴るように声を張り上げた。
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