最終話 終幕! 別学よ永遠に!!

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最終話 終幕! 別学よ永遠に!!

 翌日。 「ふあああ……」  キョーガクイーンとの激戦の後に私は歩いて自宅まで帰り、こっそりシャワーを浴びるとそのままベッドに突っ伏して眠った。  あくびをしながら登校していると、水希ちゃんが声をかけてきた。 「ルナ先輩、昨日は夜更かしですか?」 「ええ、ちょっと男性と……」 「何ですって!?」  無意識の返事の内容に、水希ちゃんは大声を上げて驚いた。 「あ、違うの! 従弟(いとこ)から夜に電話がかかってきて……」 「本当ですかあ?」  慌ててごまかした私に水希ちゃんは疑いの目を向ける。 「ごめんなさい、用事を思い出したから今日は先に行くわね」  早口でそう言うと私は慣れない駆け足で通学路を走っていった。 「ルナ先輩も、意外と隅に置けないんだから……」  水希ちゃんがそう呟いたのは、私にはもう聞こえていなかった。 「ふあああ……」  学ランを雑な感じで着たまま、僕は大きなあくびを上げた。 「どうした賢治、また夜中までゲームかよ?」  軽口を言ってくるのは僕が通っている私立番加羅(ばんから)高校の同級生である壱岐(いき)(つよし)だ。 「んーと、綺麗な女の子と……」 「何だと! お前、抜け駆けは許さんぞ!!」  剛は激怒すると僕の両肩を掴んで強く揺さぶった。 「わあっ違う違う、アニメだよ! マテリアルほのかの第4シリーズを一気に全話見たんだよ!!」 「何だ、そういうことかよ。人騒がせな奴だな」 「ははっ、ごめんごめん」  人間関係をこれぐらいの嘘でごまかせるのも男子校の楽な所だ。  守護神イゴッソーに選ばれた僕、日村(ひむら)賢治(けんじ)は魔法戦士のダンシコー仮面に変身する能力を持っている。  日本の全学校の共学化を目論む悪の秘密結社プロジェクトCEの存在を知らされ、時折夜中に出かけてはダンシコー仮面として敵の刺客と戦っているのだ。 (昨日のあの子、可愛かったなあ……)  女子高生ぐらいに見えた魔法少女の姿を思い出して、僕は楽しい気持ちになった。  衣服が少し破けていたことを思い出すとつい顔が赤くなってしまう。 「何だお前、顔が赤いぞ。気持ち悪いな」 「うーん、ちょっと熱があるのかも。風邪ひいたかもだから今日はちょっと帰るね」 「そうか。先生には言っとくからお大事にな!」  剛はそう言うとさっさと走っていってしまった。  実際昨日の戦いで魔力を使い過ぎて疲労が激しいので、僕は帰って寝ることにした。  両親はもう仕事に行っているから特に文句を言われることもない。 (ちょっと寄り道して、あれを見てこようかな)  通学路を無視して少し歩けば、高校のすぐ近くにはアニマイトというオタクショップがある。  さらに少し歩くと女子校があるらしいが特に女子生徒を見かけたことはない。  制服なのでアニマイトの中には入れないが、僕は暇な時に店の軒先に並んだ最新商品を眺めることにしていた。  今日はそろそろバトロボTの攻略本が出ている頃かな。楽しみだなあ。  そう思いながら、僕は人目を警戒しつつアニマイトへと歩いていった。 (水希ちゃんには、気づかれてないわよね……)  動転して走り出してしまったがあまりごまかせていないことに気づき、私はどうフォローしようかと走りながら考えていた。  頭の中がパンクしていたせいか、私は曲がり角から出てくる人影に気づかなかった。 「きゃっ!」  勢いよくぶつかり、私は腰から倒れた。 「いてて……」  同じような体勢で倒れていたのは高校生ぐらいの男子生徒だった。 「ごめんなさい。ちょっと考えごとをしていたもので……」  大人しそうな男子生徒に私は慌てて謝った。 「いや、僕も不注意だったんです。なので……?」  男子生徒は目を見開くと、私の方を見つめた。 「あの、何か?」 「えーと、その……」  男子生徒が恥ずかしそうにしているのを見て、私は倒れた自分のスカートがまくれ上がっていることに気づいた。 「その、じゃないでしょ!」  急いで立ち上がりながら私は男子生徒を怒鳴りつけた。 「すみません、でもわざと見た訳じゃ」 「だったらすぐに目を逸らせばいいでしょう! あなた、どこの高校生!?」  怯える男子生徒に私は激怒して詰め寄った。 「えーと、近くの番加羅高校という所で……」 「バンカラ高校ってあの男子校の!? 道理で風紀が乱れている訳だわ!」 「ご、ごめんなさい……」  今考えると八つ当たりでしかないけど、私はこの時脳内を怒りに支配されていた。 「大体あなた今は登校時刻でしょう? ここが通学路だとでも言うの!?」 「ち、違いまーす!」  男子学生はそう叫ぶと駆け足で逃げてしまった。  やっぱり、これだから男子学生は好きになれないのだ。  でも…… 「あの人みたいな男性だったら……」 「先輩、聞ーきーましたよー」  いつの間にか追い付いていた水希ちゃんが私の耳元でそう呟いた。 「その、違うの! とにかく違うの!」 「わーい、ルナ先輩のゴシップ見ーつけたー!!」  飛び跳ねて喜ぶ水希ちゃんを、私は涙目で制止するしかなかった。 (さっきのは何というか、ラッキーなトラブルと言うべきか……)  先ほどの事件を思い出しながら、僕はとぼとぼ家へと歩いていた。  朝からアニマイトを見に行ったことはなかったのでアニマイトへの道が女子校の通学路だとは知らなかった。  でも、何というか。 「僕はやっぱり、おしとやかな子がいいなあ……」  ああいう強気な女の子とはどうにも付き合える気がしない。  また、あの可憐な魔法少女に出合うことがあればいいなあ。  そう夢想していて、僕は家の前を通り過ぎそうになった。  女子校の美人生徒会長、霧崎瑠奈が変身する魔法少女ジョシコールナ。  男子校の典型的なオタク生徒、日村賢治が変身する魔法戦士ダンシコー仮面。  お互いに素顔を知らない限り、彼らの間に恋が芽生えることは今後もないであろう。  (完)
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