第1章 メッセージボトルと遺書

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大也にメッセージを送ったのは久しぶりだった。最後に連絡したのが半年前。紫輝は大也に限らず、メッセージのやり取りをすることが家族以外ではほとんどない。登録人数はそれなりにいるが、とりあえず交換した人ばかりだった。 メッセージを送って15分くらいで返信が来た。返信音に身体が過剰に反応する。大型バイクと風景のアイコン。大也からだった。 『いいよー!』 シンプルなメッセージとふざけたスタンプが来た。紫輝はそわそわしながらアプリを開き、電話をかけた。普段から職場で顔を合わしているのに、プライベートで電話をするとなると緊張する。コール音は心臓に悪い。ドキドキしていると、3コール目くらいで大也が電話に出た。 「もしもし」 普段聞いている大也の声が耳元で聞こえた。紫輝は部屋中を歩き回りながら話した。 「もしもし。あ、休日にごめんな」 「いや俺も今日は暇だったしいいって。それにしても長瀬が相談って珍しいな。彼女が欲しくなったとか?」 「それもあるが今はそれどころじゃないんだよ」 仕事中と変わらない剽軽な口調で大也は話す。紫輝は彼に今日の出来事を話した。話が重いことを察したのか、大也は徐々に静かになった。話が終わると大也は話した。 「遺書の写真送れる?」 「……うん。でも本物かもしれないし、他の人には言わないでほしい」 「おう。誰にも言わないし見せねーよ」 紫輝はスマホを耳から離し、スピーカーに切り替えた。遺書の写真を撮り大也に送信した。すぐに既読がつく。遺書を読んでいるのか大也は話さない。しばらくしてスマホから大也の声が聞こえた。 「お前とんでもないもの拾ったな」 「そうなんだよ。どうしていいか分からなくて」 スピーカーをオフにしてスマホを耳にあてた。 「……まあ俺なら元あった場所に置いてくるかな。その警察官の言う通り、おそらくイタズラか詐欺のどちらかだろうし。万が一本物でも下手に首を突っ込まない方がいいだろ」 大也も警察官と同じ意見。万が一本物だった場合も、事件に巻き込まれる可能性がある。大也の言うことはもっともだ。紫輝はそれを理解しつつも抑えられない心中を吐露した。 「やっぱりそうだよな。……でも本物なら遺書を書いた女性が苦しんでるかも」
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