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小さな結婚式のチャペルにて
扉が開いた。華やかで上品な音楽とともに、人生を辿るヴァージンロードを1歩、1歩、歩んでく。
幼稚園の頃からサッカークラブで一緒だった陸也。
保育園の頃から同じマンションに暮らして幼馴染みの遥香。
大学生の頃からサシで酒を飲む仲の、大親友の叶恵。
私の失敗を何度も助けてくれた、頼れる同期の坂本君。
――来賓の友人たちへ感謝を抱き
正月にいつも集まる顔なじみの、おばさん、おじさん、じいちゃん、ばあちゃんたち。
昔からよく可愛がってくれた、おじいちゃん、おばあちゃん、今は居ないおじいちゃん、おばあちゃん。
――昔馴染みの親戚の祝福を受け止める
――そして……
お袋。家出をした時に3日ぶりに帰った時、掛けてくれた言葉はなかった。玄関先で俺を抱きしめてただひたすらに涙を流していた。それからお袋を大事にして、今日孝行ができているだろうか。
親父。鳶職一筋で働いてきたその背中を見て育ってきた。一足早くニュータウンの住人になってから、親父はニュータウンの空き地にどんどん家を建てていった。大仕事だったなぁ。時折現場で遊んでくれた時の、仕事の顔と裏腹の息子を見る眩しい笑顔の方が似合っていると思うよ。
お父さん。早くに亡くなって話したことは無いけれど、ずっと見守ってくれたこと知ってるよ。嗚呼、遺影に映っているその笑顔で今も天国から見てくれているかな。朧気な記憶の中で、私を抱き上げてあやしてくれているお父さんの優しさが胸に広がるよ。
お母さん。女手一つで私を育ててくれて、大変だったろうに私の記憶には笑顔のお母さんしか居ない。本当に私は恵まれてるんだなぁって思うよ。私もお母さんを見習って、まずはお味噌汁を作れるようになりました。出汁から取るお母さんの味。愛しさをありがとう。
――生まれた時から今までの、父と母からの愛を両親に還すのだ
たった10歩の永い道を、過去から今へ続くバージンロードを歩んで今、君と向かい合う。
『誓いのキスを』
近づいてくるその瞳には、未来の私が映っている。
―きっと続く―
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