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1 約束
「うみ」
「......」
「うみ、泣かないで......」
俺たちは大丈夫。きっと、きっと大丈夫だから。またすぐに見つけに行くから。
だから、だから......!
伝えたい言葉がこぼれ落ちそうな程たくさんあるのに、俺は、どの言葉を選べばいいのか分からなかった。
ただ泣きじゃくることしか出来なかった。
目の前の大切な人を安心させることが、また出来ない。
他のやつは出来るのか?いやそれだけは嫌だ。
もう時間が無い。また俺たちはバラバラにされる。離れ離れになってしまう。
ひどいよ......。ひどいよ......神様......。
どうしてもまだ足りなかった。
うみの涙を止めるだけの力も、そして笑顔にする力も、うみを守る力もまだ足りない。
俺はなんて不器用なんだ。
「りく」
うみが俺の名前を呼ぶ。
大好きで透き通った綺麗な声。
この声に何度救われてきただろう。
「りく、私は大丈夫だよ」
そう言って無理に作り笑いをして、俺を安心させるように抱きしめてくれた。
そんな風に無理しないで欲しいのに。
俺の心の中にある沢山の言葉。
これだけは絶対に変わらない。
「うみ、俺は......うみがだいすきだよ」
うみは笑ってくれた。本当に幸せそうだった。
そして体がフワッとマリンブルーの美しい光に包まれて ───うみは消えた。
うみが消えたあとも、暗闇の星はキラキラと輝く。途切れることなく続いてる。
何億何万もの星たちがそれぞれの光を保ったまま、ダークブルーの空に散りばめられている。
とても幻想的だった。
俺ももう消える。またあの場所で会えるのかな。
そして俺は目を閉じた。俺たちのように苦しい思いをする人達が居なくなりますように。
皆大好きな人と結ばれて幸せになりますように。両手をぎゅっと握りしめて強く願う。
また会えたなら次は必ず心の底から笑わせてみせる。俺の全てをかけて守ってみせるから。
そっと目を開けると俺の体はエメラルドグリーンの光に包まれていた。
光に身を任せる。まるで炭酸に溶ける氷のようだった。
忘れない。きっと忘れない。
そして俺はうみと同じように溶けていった。
「また会いに行くね......うみ」
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