2 記憶

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やっと全ての授業が終わって帰りの準備をしていると、部長が俺の教室の前にやって来た。 「海陸ー部活行こーぜー」 「うん!」 こいつは中学校が同じだった友達だ。 何故か高校生になってから話し出すようになったのだ。 部活がたまたま同じで仲良くなった。 その面白さと明るさで、次期部長だと部員のみんなに言われていたから、俺は勝手に「部長」というあだ名をつけて呼んでいた。 俺は荷物を持って部長と活動場所へ向かった。 ドアを開けると例の女の子と後輩たちが楽しそうに話をしているところだった。 「あ!海陸くん!さっきぶりだね!」 嬉しそうに笑いながら手を振る彼女の姿にほんの少しだけドキドキしてしまった。 俺は手を振り返すと部長と雑談を始めた。 「今日さーまじでやばかったんだよなー」 「何がー?」 「俺生物の授業中に寝てたんだよ、そしたらさ............」 しばらく経ったあと、教室にALTの先生が入ってきて部活が始まった。 そう、俺たちは英語部だ。 英語部は週一しか活動がない。 「Today's game is banana〜」 ALTの先生はとてもユニークで優しく、大好きだ。 日本語の勉強中でカタコトなのも可愛らしい。 名前はアラン・エルート。スラッとしていて、柔らかい雰囲気の男の先生だった。 「海陸くん、ペアなろ〜」 「いいよ〜」 今日はペア戦のゲームみたいだ。(説明聞いてなかった) ゲームの間中例の女の子はずっと楽しそうにしていた。 何だかこっちまで嬉しくなるなぁ。 ぽけーっとしていると例の女の子に名前を呼ばれた。 顔がすごく近くなって小さな声で話しかけてくる。 「海陸くん、私昨日LINE送ったんだけど見てくれた?」 「え、あ、えっと夢の話だっけ?」 「そーそー!不思議な夢だったの」 「実はさ、俺も変な夢見ちゃってさ....」 俺たちはゲームそっちのけで夢の話で盛り上がった。 部活の前はガチガチに緊張していたはずなのにもう大分慣れたみたいだ。 久しぶりに聞いた声はやっぱり可愛かった。 「でも、海陸くん大丈夫?昨日あんまり寝れてないんじゃない?」 「実はそうなんだ......今日の授業なんて1ミリも内容入ってこなかったよ......」 「えー大丈夫?今日はゆっくり寝なよ!睡眠不足は怖いよ!私やばかったもん!」 本気で心配してくれているようだ。 いつもにこにこの顔が少しだけ悲しそうに見える。 「今日いっぱい寝て、また明日から頑張ればいいさ!今日の宿題は寝ること!ね?」 彼女は俺を安心させるように笑ってくれる。 その笑顔にやられて俺は、はいとしか言えなかった。 彼女と話したら何だかスッキリした気分になった。疲れが溜まっていた身体もほんの少し軽い気がする。 俺は部活が終わった後、家に帰ってお風呂から上がるとすぐに寝てしまった。 もちろんLINEはしっかりお風呂で返しましたよ。 俺達今日は結構話したなぁ。 今日も話せて幸せだ。なんか安眠できそう....。 目を閉じると今日の彼女の嬉しそうな顔が浮かんできて幸せな気分で眠りについた。 (おやすみ......うみ............)
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