2 記憶

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15分くらいたった頃、下の階から心地よい音楽と「お風呂が沸きました」の声が聞こえたので着替えを持って階段を駆け下りた。 小学校低学年の頃、お兄ちゃんとこの曲を真似て「頭が沸きました」なんて言ってたなぁとお風呂場の扉を開けながら思い出し笑いをした。 服を脱いで洗濯カゴに入れる。 棚からくしをとって髪をとかす。 最近お風呂の前に髪をとかすと絡まりにくくなると聞いて、やっていることだ。お風呂場の引き戸を開けるとフワッと湯気が流れ込んできた。 引き戸を閉めて体と頭を洗い、湯船にゆっくりとつかる。お風呂は割と好きだった。 ついでに俺は、お風呂にスマホを持ち込む派だ。 「お風呂でスマホ使えば一石二鳥じゃん」という謎の持論に自分でも納得していた。 日課となった今は湯船でリラックスしながらLINEを返したり動画を見たりしている。 そもそもそんな毎日LINEを返す相手が居るのか?と疑問に思っただろうが、 それが......居るんだよなぁ。 去年の夏休みくらいからLINEをするようになった人。しかも女子。去年の文化祭をきっかけに仲良くなった女の子だった。 文化祭は10月くらいだったから6ヶ月間もLINEが続いていることになる。 その間進展があったかと言われれば微妙だが、それでも俺は満足していた。 女子とLINEをしたこと自体あまり無かったので初めのうちは本当にドキドキしながら返信を待っていたと思うと少し恥ずかしくなる。 なぜ俺が女子とLINEをあまりしていないかって?高校1年生の頃好きだった女の子に彼氏が出来たからだ。その女子とはLINEもしていたし、学校でも少し話せるくらい仲が良かった。自分でも自意識過剰だと重々承知していたが、いける!と思っていたのだ。しかし、気づけばその女子は俺よりもオシャレでかっこいい男と付き合っていた。その出来事をきっかけに俺は自信をなくし、女子と関わることに少し抵抗感を覚えるようになったのだ。 「あ、3時間前だ......」 未だにLINEの通知を見る度に少しドキドキする。ほんの少しだけ。 今LINEをしている女子は文化祭前にたくさん打ち合わせをして一緒に劇の主役を務めたりしたので友達のように気楽に話せる存在だった。 今日の話題は新作のゲームについて。 この子はいい意味で女子っぽくなく、ゲーム好きで男の趣味も理解してくれる。 その上俺の珍しい趣味の話をしてもすぐに盛り上がるくらいお互い意気投合していた。 いつも返信に時間をかけてしまう俺はこれじゃ伝わらないかなと打っては消し、打っては消しを繰り返して、やっと今日の分の返信を終わらせた。 「海陸ー?のぼせるわよ〜」 扉の向こうからお母さんの声が聞こえた。 「はーい」と返事をして俺はスマホの電源を切った。
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