駄菓子屋のおばちゃん

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 遠目にみる校舎は思い出の中にある姿のままだった。しかし、近づいて行くにつれその幻は消え現実が露わになっていく。窓ガラスが何枚も割れており、木造の壁は塗装があちこち剥がれていた。そして校庭にもあちらこちらに草が生い茂っている。  ああ、時が経ったんだな……  私は呆然と自分が通っていた小学校を眺めた。廃校になった後、他の施設として利用したこともあったそうだが過疎化が進む村である。ほとんど利用されることはなく、建物の老朽化が(ひど)いことから取り壊すことになったらしい。  この有様を見ると仕方のないことだと思う。その一方で、訪れる者もほとんどいないこの場所で、朽ちるに任せておいても問題はないのではないかという気もする。ならば残しておくことは出来ないのだろうか。では校舎を残すために何か行動を起こせるのかというと、私にはその気力も無い。  せめて今の姿を画像に残しておこうとスマホを取り出す。しかし、シャッターボタンを押すことができなかった。やはりこの姿を残しておきたくはない。私が通っていた頃の古びてはいるが、建物自体が生きていると感じられる姿を自分の中に留めておこう。結局、写真も動画も撮らないまま私はスマホをしまい、来た道を戻り始めた。
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