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最後の気球に、ヒワとサルクイが待っていた。
「お前の親父は?」
「船の始末をつけるって」
「いいのか」
「…うん」
気球が離れていく中。
風がチリチリと舞う。
「かぜ?」
「ヒワ!」
何かが気球の籠に飛びつく。
押されたヒワの代わりに。
トキの首に、腕が巻き付く。
「お前のせいだ!
反逆者め!
お前は道連れだ!」
王の側近だった。
「トキ!」
トキは引っ張られる。
「落ちる…!」
サルクイがトキの服を掴む。
籠が揺れる。
重みで気球が下がっていく。
宙吊りの側近は叫び声を上げる。
片腕はロープを掴み、もう片方の手でトキの首を締め付ける。
籠の縁に立ちあがり、トキを引き摺り出そうと足で籠を蹴る。
「トキを、はなせ!」
ヒワは必死だった。
側近が掴んでいたロープを。
解いた。
「あ」
張っていたロープが緩む。
支えを失った身体が。
ぐらりと揺れて。
宙に浮く。
側近は、最後に、背後の飛行船を振り返る。
「トキ…!」
サルクイがトキを引っ張る。
王の側近は。
音もなく。
気球と飛行船の間を。
真っ逆さまに。
落ちていった。
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