431人が本棚に入れています
本棚に追加
「大丈夫です。ありがとうございます」
「七緒ちゃんがいてくれて助かるよ。なかなかスタッフが定着しないし。特にこの時間帯は。求人もかけたところだし。良い人が見つかればいいな」
「私の方こそ中途半端な勤務時間になってしまうのに、助かっています。長く続けてくれる人、見つかればいいですね」
私の十八時から二十三時までという勤務時間は、店長がいつも調整してくれているから。本当はもっと長くシフトに入れれば良いんだけど。
次の日も普通の仕事がある私にとって、六時間以上働くことはキツかった。
休憩を終えて、商品を陳列していた時だった。
あっ、いつものお客さんだ。
ほとんど毎日来る常連さんもいるため、つい顔や決まって購入するものまで覚えてしまう人もいる。
「いらっしゃいませ」
隣に来てドリンクを選んでいた常連さんに声をかける。
私が声をかけると、軽く会釈してくれた。
ふとレジを見ると、お客さんが並んでいた。
行かなくちゃ。
慌てて隣のレジで対応をする準備をし、二番目に並んでいたお客さんに声をかける。
対応が終わり、次のお客さんの顔をチラッと見ると――。
先ほどまでドリンクを選んでいた常連さんだった。
この常連さん、ほとんど毎日同じくらいの時間に来てくれる。
180センチくらいの身長が高い男性で、メガネをかけており、いつもフードか帽子を被っている。そのため顔はよく見えないが、その容姿に特徴があったため、彼のことを覚えたのもすぐだった。
私より年上に見えるけど、どうなんだろう。
まるで芸能人が変装をしているかのようなカッコだ。
それに――。
こんなこと考えちゃいけないとは思いながらも、この人の手が好きだった。
長い指に手の甲に浮かぶ血管が好き。
会計の時、ふと見惚れてしまうことが多い。
指輪はしていないから、結婚とか彼女はいないのかな。
そんなことを考えながら常連さんの対応を終えた。
最初のコメントを投稿しよう!