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「なんで?」
<うん、そうだよ>と言わないから、やっぱりお弁当屋さんで買ったんだよね。
「ゴミを捨てようと思ったら、ゴミ箱の中にお弁当屋さんの袋が捨ててあったから。そう言えば今日の唐揚げの味、似てたなって思って」
匠は私の言葉に<はぁ>と溜め息をつき
「だったらどうしたの?俺だって就活とかして疲れてんの。働きたいのに働けない俺の気持ち、わかる?七緒だけは俺のこと理解してくれると思ってたのに」
あぁ、やっぱり機嫌、悪くさせちゃった。
「ごめん。匠が一生懸命家事してくれるのは本当助かってる。でも食費が前よりもかかっている気がするから。私のご飯はそんなに気にしなくて良いから。簡単な物で。気を遣ってもらってごめんね」
私が謝ると匠は
「俺の方こそごめん。今日はホント、疲れてて。七緒が頑張って働いてるのに、夕飯も作れないとか思われるのがイヤで。作ったフリをした。これからは無理しないようにするから」
そう言われ、軽くハグされた。
「ううん。いつもありがとう」
その後、私もシャワーを浴び終えて、寝室に。
ベッドに横になりながら、匠はまだ起きていた。スマホを眺めている。
私が隣に行き寝ようとすると
「おやすみ」
そう言って声をかけられた。
「おやすみ」
電気が消えてからも、匠のスマホの光が漏れていた。
いつまで見てるんだろう。
そう言えば私も寝る前は必ず好きなマンガとかゲームとかチェックしていたのに。
いつからかそんな時間もなくなっていた。
横になると身体は眠るように命令してくるから。
それに抗うことができず、すぐ眠ってしまう。
今日もほら――。もう眠い。
次の日――。
<ピピピッ……ピピピ……ピピピ……>
スマホのアラーム音で目が覚める.。
もう朝……。身体、怠い。でも起きなきゃ。
隣を見ると、匠はまだ寝ていた。
起こさないようにゆっくりとベッドから降りる。
朝ごはん、食べる気がしないや。
そう言えば、お弁当って作ってくれてあるのかな。
冷蔵庫の中を見ると、なかった。
これで三日目か。
<お弁当も作るから。そうしたら節約になるだろ?>
なんて言ってくれたのに。
これからは私が帰ったら下準備すればいいか。
パンを焼き、ジャムを塗って食べた。
食欲、やっぱりないや。
いつも通り出社するために準備をし、静かに家から出る。
私が出かける前に匠が起きることはなかった。
最初は<行ってらっしゃい>なんて言葉をかけてくれたけど、今は彼が何時に起きて、日中何をしているのかわからない。
前に聞いた時は
「日中はちゃんと就活しているよ。職業安定所にだって行っているし、いろいろ勉強してる。疑ってるの?」
なんて言われてしまってから、一歩踏み込んだことを言えなくなってしまった。
完全なるコミュニケーション不足だとは思っているけれど、匠だって言われたくないことだってあるだろうし。
彼が一生懸命努力してるって信じたい。
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