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白い灯台
目を閉じて大きく息を吸い込む。
足の裏全体で岩肌の質感を感じる。
両腕を真っ直ぐ空に向ける。
この時、ボディアライメントをしっかり意識する。
ピンと強く引っ張られた吊り上げられた操り人形のように、身体を締めて爪先立ちの姿勢をキープ。
岩壁に波が打ち寄せる音がする。
カモメかウミネコかどちらかわからない鳥の鳴き声も聴こえる。
よし、いける!
そう思った刹那、あの忌々しいビジョンが頭の中をよぎり、
息を吐き脱力した。
ここは半島に突き出た岬。
その先端に海を背にして立つ葉山果夏。
正面には僻地の数少ない観光地となっている真っ白な灯台。
灯台のフェンスに恋人同士で南京錠をかけ永遠の愛を願うというのが流行った時代があるらしい。
時刻は早朝。
初日の出でもなければ人は来ない。
果夏は南京錠が無数についた灯台のフェンスに寄りかかって、ため息をついた。
この灯台も遠くから眺めると綺麗なんだけど、近くで見ると傷や汚れ、塗装の剥がれなどが目立ちお世辞にも綺麗とは言えない。
私と一緒だ。
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