白い灯台

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 灯台を後にして、海岸通りを軽くランニングしながら、祖父母の家に向かう。  早朝ランニングは中学生に入ってから続けているルーティーンワークなので、この土地に来ても止められない身体に染み付いたものだった。  身体はまだ競技に戻りたがっているのかな。  でも、心がそれを拒んでいる。  いや、本当は拒んでいるわけではないんだけど、どうしてもダメなのだ。  早朝の海は穏やかだ。  海の香りにもだいぶ慣れた。  少し離れた港町の方に行けば、漁師さんたちや市場関係者の人達で朝は慌ただしいのだろう。  でも、この辺りは田んぼばかりで何もない。  何もないから心地よい。  そして、海岸から3キロ程内陸に向かうと山があり、そこではみかんの栽培が盛んである。  また、食肉用の牛舎や養豚場も散見していて、そこの近くを通るときや風向きによってはかなり遠くまで、その有機的な臭いがする。  こちらの臭いにはまだ慣れない。  
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