ギフト

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「 隣、いいかな?」 「 はい、どうぞどうぞ。」 「 果夏ちゃん、音楽が好き?   いつもここで練習を見てるよね。」  学生さんたちは、合宿の間に果夏のことを果夏ちゃんと呼んでくれるようになっていた。 「 いや、あの、音楽のことは全然詳しくなくて。でも、みんな一生懸命だし、楽しそうだからつい見とれてしまって。」 「 ありがとう。そうだね。みんな音楽や演奏が好きだからね。聴いてくれる人達がいれば、夢中になって練習するんだよ。」 「 みなさんは卒業したら、なんていうのかな、楽団に所属したり、演奏家になったりするんですか?」  南川は少し黙り、そして、穏やかな笑顔を作って話し始めた。 「 この中で大学を卒業後にプロの演奏家になったりする人は一人もいないよ。    僕らはね、演奏家としては四流とか五流とかそんなレベルだから。  プロの演奏家としてやっていける人は幼い頃から英才教育を受け、コンクールなんかで賞を授賞したりして、海外の有名な学校や指導者の元に留学したりするんだよ。  国内でも優秀な人達がたくさんいてね、音大とか芸大に進学していくんだけど、そんなエリートたちでも競争に打ち勝っていかなきゃいけないなくて、演奏家として食べている人はその中のほんの一握りかな。  みんな普通に就職して、普通に仕事に終われ、趣味でたまに楽器の演奏をするみたいな感じになると思うよ。  あっ、学校の先生なんかになれたら、部活の顧問として吹奏楽に関われたりするかもだけど。」 「 そんな、こんなに上手なのに…。   ごめんなさい。   私、無神経なこと言って…。」  いたたまれない気持ちになった。 「 謝らないで。   果夏ちゃんが悪気がないことはわかってるし、上手って言ってもらえたら嬉しいんだよ。   何より楽しさや情熱が伝わってるのは演奏家冥利につきるしね。」
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