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「 果夏ちゃん。
みんな同じように頑張って練習しているのに、プロになれるほんの一握りの人達と、なれない人達の差って何だと思う?」
南川の表情が真剣な表情に変わった。
どうしよう。うまく答えられない。
言葉に詰まり、困っていると、南川の表情は再び柔和なものになった。
「 果夏ちゃんはギフトっていう言葉は聞いたことある?」
「 贈り物?プレゼントみたいな…。」
「 うん、そう。一般的にはそうだね。
もう一つよく使われるのは、神様からの贈り物。
つまり、天賦の才能とか特殊な能力っていう意味で使われることもあるんだ。
普通の人が努力では越えられない壁をギフトを持つ人たちは越えていける…
可能性が高くなるんじゃないかと思うんだ。」
「 ギフト…。」
「 うん、果夏ちゃんには、そのギフトを無駄にして欲しくなくてね。
ついつい、こんな余計な話をしちゃって、ごめんよ。」
「 !
南川さん、私のこと知っていたんですか?」
「 葉月果夏と聞いて、知らない人ってそんなにいないと思うんだけど。」
「 そんな…。」
鼓動が早くなる。
「 実はね、健太くんからお願いされてたんだ。
飛込みの葉月果夏って気づいても知らない振りをして欲しい。普通の女の子として接して欲しいって。
彼女は今、多分、何かに悩んだり苦しんだりしていて、大きな傷体験があるのかもしれない。
そして、それは飛込みに関係しているかもしれないからってね。
健太くんの申し出を部員全員で共有し、果夏ちゃんを見守ることにしたんだよ。みんな、本当は「葉月果夏」と一緒に写真を撮ったりサインを貰ったりしたかったと思うけど。」
健太がそんなこと。
私、吹奏楽部の合宿の前に健太と会ったばかりなのに、どうして…?
「 素敵なボーイフレンドだね。大事にしないと!」
「 そんなんじゃ…」
南川はそんな言葉を残して、笑顔で練習に戻っていった。
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