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朝日が水平線から離れ、海面がキラキラと輝く。
灯台もその白さが鮮やかさを増していた。
「 ねぇ、健太。
ちょっと見ててくれる?」
と言うと、靴と靴下を脱ぎ、さらにTシャツと短パンも脱ぎ捨てた。
競技会用の水着姿になった果夏は岬の先端までゆっくりと進む。
先端にたどり着くと、振り返り海側を背にして直立する。
視線を上げるとそこには白い灯台、そして、果夏を見つめる健太。
そこからいつものルーティーンに入る。
目を閉じて、鼻から息を吸い、腕を水平伸展、
さらに水平伸展から頭上にゆっくり振り上げ、爪先立ちになる。
マリオネットの人形のように身体をピンっと締めて技をイメージする。
健太の視線を感じる。
南川の笑顔や吹奏楽部のみんなの一生懸命に演奏する姿が浮かんだ。
原田コーチ、祖父母、両親…次々と、色々な人の顔が浮かぶ。
ゆっくりと息を吐き、目を開けると健太は視線を外さす、果夏をしっかりと見つめている。
よし、大丈夫。
ここまま海に飛び込んで「5253B」を健太に見せてあげたいと思った。
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