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オオキンケイギクに似た在来種の中に『キバナコスモス』というのがある。でも、私も経験上最早間違えるなんてことはない。加えてキバナコスモスが花開くのは初秋で、春先に咲くという事はめったにない事だ。
因みに今いる場所は人里離れた山の中。こんなところまで整備することに意味があるのかまでは私には分からない。実際古村市はどんな大雨でも河川が氾濫したことはなく、おまけに市街地の川幅も広く堤防もかなり高い位置にある。上流にあるダムでも決壊しない限り水害に遭う事はないだろう。もしかしたらこれも余剰の公共事業費を無理やり使った結果なのかもしれない。
連絡から十五分ほどしてまさみさんが到着した。山中とはいえ、ここは市役所からそれほど遠くない場所だし、まさみさんはすぐにこちらへ向かってくれたのだろう。
「待たせたわね」
「いえ、今回はそれほどでもなかったですよ」
何気なく言ったつもりだったが、まさみさんには嫌味に聴こえてしまったらしい。
「大事な事だから、いつもしっかり待っていてくれて助かるわ」
なんだかその物言いには少しだけとげがあった。
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