外来種

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 そのまま河原に向かって歩み出したまさみさんは、中ほどで歩みを止めるとしゃがみ込みながら私を手招きした。 「これ、クララっていうんだけどこれだけはしっかり残しておいて欲しいの。間違っても抜いちゃったり踏んだりしないようにね」  まさみさんが指差したその先には、草というよりは低木といった感じの植物が生えていた。よく見るとオオキンケイギクが生い茂るその中に紛れるように点在している。 「あの、これって‥‥‥」 「クララってね、根っこを食べるとクラクラするほど苦いからその名が付いたんだって。おかしいわよね、普通そんなのわざわざ食べないって」  問いかけようとした私の声に気付かなかったかのようにまさみさんはその植物を見つめながら笑っていた。なにか思い入れでもあるんだろうか。でも、そんな個人的な理由でわざわざここに来たわけでもないと思う。思うけど、でも彼女は過去に何度も‥‥‥いやそれは今は言うまい。  まさみさんは両膝に手を添えながらゆっくりと立ち上がって私の方に向き直った。 「クララはとっても貴重なの。なぜなら‥‥‥」  そう言いかけたまさみさんの瞳が大きく見開かれた。体も硬直したのが分かりやすいほどだった。その視線の先を追うように私も振り返った。
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