1人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
絶滅危惧種
突然駆け寄ってきたので何事?!と驚いている私の脇を、まさみさんは走り抜けていった。その足跡を見ると、まさみさんは走りながらもしっかりとクララだけは踏み倒さないようにそこを避けていた。
まさみさんを視線で追うと、どうやらまさみさんは小さな蝶々を追いかけているようだった。先ほどまでの緊張感はどこへやら、突然童心に帰ったのかと私は少しあきれるようにその動向を見ていた。
蝶々なんて捕まえてどうするのかと思っていたら、その近くまで来てまさみさんは歩みを遅くした。どこかに止まってくれるのを待っているようだ。
やがてその蝶々が一本の草木に止まると、まさみさんは慎重にそこへと近付いていった。
しばらくその様子を観察していたまさみさんは、ソレを捕まえることなくこちらへと戻ってきた。
「良かったわ、まだいたのね」
「な、何がですか?」
私の事を言っているのかと思ってそう聞き返してしまったが、実はそうではない。まさみさんのいう『まだいたのね』は、まさみさんが追いかけていた蝶々の事だった。
最初のコメントを投稿しよう!