絶滅危惧種

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 そこにいたのは、『オオルリシジミ』という、絶滅危惧種に指定されている蝶々だった。もはやこの街にはいないのではないかとまで言われていたが、それでもその蝶々を守るために街は尽力していた。  そして、その蝶々の幼虫はクララという植物しか食べないという。当然卵もそこに産むことになる。 「クララは人には有毒だけど、オオルリシジミにとっては唯一の食料なの。それを奪っていった責任は私たちにあるのよね」 「蓼食う虫も好き好きってことですか」  私のピントのズレた返しに苦笑いしながらまさみさんは続けた。 「例えば葛もそう。私たちにとっては迷惑な植物かもしれないけれど、実はカナブンの幼虫は枯れた葛の葉でしか生きられないの。最近カナブンが減少傾向にあるのもまた、私たち人間が原因なのよ」  ただ外来種を駆除すればいいと思っていた私の認識が甘いものだとその時知った。もちろん、生活環境課において在来種の保護までは担ってはいない。でも、それを知らずにただやみくもに外来種を駆除していると、知らず知らずのうちに在来種の居場所まで奪ってしまう。  これは生活環境課の、という話ではない。私たち人間全てが知っておくべきことなのだ。
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