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凍りつく私を満足げに見つめて、前の男性に視線を戻す――お義母さん。
浮かべていたのが、いつもの愉悦に浸った笑みじゃなくて。
余裕のあるような、勝ち誇ったような、私に何かを見せつける笑みで。
「紬生?どうした」
「あ――ううん。何でもない」
強張った表情のまま奥を凝視する私の異変に気づき、燈矢がふっと声を固くする。
だれど、せっかくのデートを壊してしまいたくなくて――何より、燈矢の手をこれ以上煩わせたくなくて。
私は曖昧に誤魔化すと、一生懸命、ランチを味わうことに意識を戻したのだった。
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