第一話 偽スープ屋とドーナツ

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第一話 偽スープ屋とドーナツ

店が決まったら、そこが拠点になるので、少し大きめの店を探すように言われています。 王都へ入る前から、こっちを見る視線。貧しい者たちはすぐにわかります。 やせ細り、明日の命もどうなるか? 人道支援など皆無だと聞いています。教会は、王都では機能していないと昨日聞きました。 動ける者が南を目指す、生死はそこで分けられます。 「ねえ、あそこにもいる」 「多いね」 「孤児だけじゃなさそうだけどね」 「かわいそうだじょ」 でも、みんなは助けられない、できるだけやってみるけどね。 そうだな。 今は安易に手出しできません。 馬車は王子が貸してくれたものです、これだけの人数ですからね助かりました。 キャンプは楽しかったのか、はたまた疲れたのか、男どもは寝ています。そろそろ起して着替えさせないとね。 「町へ入るものは身分証明書の準備を」 「馬車は右へ、歩きのものは左へ」 馬車のまま石垣の中へ、そこで検問です。 「教会へ、滞在するのか?」 「はい、マスターからは、店をやる承諾をいただいてきましたので、場所さえ決まれば」 「店、なんの店だ?」 「スープ屋です、こちらに三号店を出す予定です」 「三号店?」 「まさか、エルージュのスープ屋か?」 「ええ」 「三号店って二号店はどこにあるんだ?」 カルクにスープ屋、モント村に中華屋があります。 「まじかー!」 「店ができましたらどうぞ、まだ場所も決まっていませんけど」 「名刺だじょ、これはあたいの、来てくれたら席を開けてあげるじょ」 「まじか、そりゃいい、ありがとよ」 「ずるい、俺にもくれよ」 なんだかんだと、王都にも名前が伝わっていてありがたい事です。 「ん。んんん!」と咳払いをされました。 「終わりだ、悪さしないように、通れ!」 頭を下げて、馬車に乗り込もうとしました。 「ちょっと待て!」 上の人のようです。 「エルージュの教会からか?」 「はい、マスターの手紙をもって、レフト通りへ参ります」 「レフト、おい」 「はい」 その名刺とやら俺にもよこせ。 「ではわたくしのを」 「ン?アー、お前か、ほう、うまく染めたな、黒髪のルシアン」 え? するとその人は腰をかがめ小さな声で、俺はシュエル、ケインから聞いている、やばい事だけはするな、それと何かあったら俺のところへ。 力強い応援だ。 「はい、ありがとうございます、お店ができましたら皆さんおいでくださいね」 待ってます! ばいばい! 「とうとう来ましたね隊長」 「ああ、サーて、お手並み拝見、なにをしてくれるかね、ネズミどもは」 「隊長!南に白い狼が出たと報告が」 「ハア、狼に食われねえようにな嬢ちゃん、行くぞ!」 はい! 空いている家、店をしてもいい物件を探すのが大変でした。ただ、カールさんの名前と、いい不動産屋さんを紹介してもらったので、一日待ってほしいと言われましたが何とか見つかればいいのですが、こっちも探してみなければいけません。 私たちは宿屋に入り、さっそく調査に外へ出ました。 「まったく、未来(みく)はこれでも大人なのに、なんで子供に見えるのかな?」 「ははは、しかたがねえよな、おこちゃま」 「うるさい、悪かったわね童顔で、ふん、若く見えるから『さば読んでやる』」 またわからない言葉使うな。 宿屋で子ども扱いされ、マルコ、セル、アレン、レナは大人料金です。 いいんだけどさー。 体は子供、頭脳は大人、その名は名探偵ルシアン! 「泥棒だけどな」 行こう、行こう。 お腹すいた! 「もう!」 屋台を見て回りました。 「高いな」 「串焼き、一本がドロップ四枚かよ」 「野菜も高いな、冬だし余計だな」 「魚も、海から遠くなるからか、高いね」 「パンは、はあ、またあの硬いパンか」 モントのパン屋さんは、頼んだとおりのパンを作ってくれました、柔らかいパンに目を丸くしてましたけどね。 「ねえ、食器とかもどうする?」 「ああ、食器と鍋は、当てがあるんだ、どうする?ごはん?」 んー、一応、どんなものがはやっているのか、人の多くいるところを探ってみましょう。 お、あそこ、結構人がいる。 ほんとだ。 「いらっしゃい、いらっしゃい、おいしいスープはいらんかね」 「「「スープ!」」」 確かにスープでした、高いし、においがいまいちです。でも人が多くいるので回転率はいいようです。 「いただきまー、うー」 「こりゃ」 「まず」 「だしがない」 「うー」 「べー」こら吐き出さないの?ケンタはいやいやです。もう、仕方がないな。 「うー、ウー言わないの、でもこれでなんとなくわかった、彼らは、まねをした、でも本物はしらないのか、知っていてもマネできないでいるのかもね」 いる? バックから取り出したのは粉末だし。 みんなが一斉に入れ物を差し出しました。 ぱらぱら振り掛けるだけで、見違えるほど味が変わります。 昆布と干し椎茸のグルタミン酸、鰹節のイノシンサン、最強ですよね。 「屋台で売っているところを見ると、さほど儲かってないな」 「んー」 「何考えてんだ?」 「あの子たち、スカウトしたい」 は? あいつらを使うのか? その方が早いよ、野菜はちゃんと切れてる、味もさほど悪くない、文句を言わない人がいるんだもの。 そりゃそうだが。 彼らが何者か、つけるわ。 もう。 「アレン、あんたは王都のことある程度分かるのよね」 「まあ」 じゃあ、アレンだけ残して、後は、その辺の食べ物を少し調査して先に宿屋へ帰って。 「私も残ろうか?」といったのは妹のレナ。 「ううん、みんなのことお願い」 そこで私たちは別れました。
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