第一話 偽スープ屋とドーナツ

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やはり、暗くなると店じまいのようです。 なんか変な人たちがいます。 屋台を練り歩く男たち。 「なんだろうね?」 「上がりを取ってるんじゃないか?」この辺を牛耳ってるものみたいだなというのです。 リオたちから金をむしりとっていたやつらを思い出しました。 彼らのところに行き、袋を取りあげました。お金を取ったようです。 「どうする?」 「あいつらは、店を出したら来るだろうから、あの子たちの方ね」 「了解」 彼らのあとをつけます。 大きなため息。 儲からないなという声。 マネだけじゃダメなんだよという声も聞こえてきます。 でもよー。 ん? どうかしたの? 聞いたことのある声だというのです。 暗闇でよくわからないから、とにかくついていきましょう。 「やっぱりまずいー」というのはベル。 「美味しくない、それに固い!」 「店の名前は控えたか?」 「控えたけど、あれじゃダメだ」 「んー、朝の方がいいか?」 「朝市があるんだろ?」 「そっちの方がいいかもな」 「それより、姉ちゃんに頼まれたのは?」 「ええと、向こうね」 「さすが王都生まれ、ありがたいね」 「でも、こんなだったかな、もう十年たつんだもんね、忘れているわ」 「あれ?リオは?」 どこに行った? 辺りをキョロキョロ。 「あいつー、あ、いた」 みんなが集まった。何かを見てるリオ。 どうした? 指をさした。 「あれさ、ミクのおやつ」 え? どこ? あそこ。 指さしているのは細い路地、みんなはしゃがみ込んでリオと同じ目線になった。 「あー!」 「あれ!」 「「「ドーナツ!」」」 みんなはその細い道を入っていきました。 「はいどうぞ」 女の人だ。 どうする? 同じものか確かめよう。 「はいいらっしゃい」 「あのー」 「ん?」 「おばちゃん、ドーナツ頂戴!」と言ったリオの口を手でふさいだ。 すみませんそれを五つください。 「…あら、ドーナツ知ってるの?」 「うん、お兄ちゃんなら作れる」と言った口を又ふさぎました。 お兄ちゃん? そこ並ぶ背の大きい子達を見回しました。 「まあ、まあ、なんだか、懐かしい感じねー」 「懐かしい?」 「ええ、これを教えてくれた子をね」 「あの、その子って、もしかして話のできない子ではありませんでしたか?」 「え?」 四年、いや五年前ぐらいですか? 「…… ええ」 その女性から話を聞いてみると、やはりミクの事のようでした。 未来と出逢ったのは、シューセッツの北、今戦争をしている国だ。 ボロボロでね。 あんまりにもかわいそうで言葉も通じなくて、泣きながら、出したスープを食べていたわ。 彼女がお金を出したから、いらないというと、小麦を指さして作ってくれたのがこれだったそうだ。 子供がいたから、みんな喜んで食べたそうだ。 女の話は大体あっている俺たちはミクについて来て南下した、だけど……。 この女どこかで?……。 リオは一緒に店を始めようと思って王都へきた話をしていた。口はもう止められない。女は驚いたような顔をした。 「同じだー」 穴の開いたドーナツ。真ん中の丸いのはきな粉をまぶしたもの。 ミクは同じものを作って子供たちに食べさせている。 「そう、おいしい?」 「うん!」 「そうか、スープ屋をしたいというのは、そんなことがあったからなんだな」 「スープ屋?エルージュ領の?」 「知ってるんですか?」 有名だもの、食べたことはないけどね。 「私たちのお店だよ」 そうなの。できたら行くわ。 ルシアン喜びます。 ルシアン? はい、もう言葉も話せるようになったんですよ。 そう、よかった。 俺達はドーナツを買い、宿屋へ戻った。ただ一人、それを冷静に見ていたマルコがいた。
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