第八話 ネズミ大作戦

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『なにがラルータだ、ネズミごときに、我が負けることなど…」 王は、ある場所へと向かっていきます。 そこは、暖炉のない部屋です。 ギーっと重い音を立て、大きな扉があきました。 「ふー、ここだけはきれいなままか?そこにいるのは誰だ!」 声が響きます。 カツカツと近づいてくる音。 玉座で待ち構えるものは足を組み、王をじっと見ています。 「何者だ!」 「この国をいただきに参上した」 そのものは黑い布で顔を隠し目しか見えない。 真っ黒い姿。に白いシャツは、見たことのない美しい花の刺繍が胸にしてある。 「は?この国をだと?」 「偽善者というお面をかぶった人殺しの王。独裁者の最後、どうなるか知っておろう」 「は?何のことだ、そこから降りろ!」 てすりについた手に顔をのせた者はこういった。 「千年ののろい、黒髪の魔女が今ここに降臨したのだ」 「はっ、なにを!」  王様!  エディッシュが入ってくるとシャラシャラと音を立て、剣をぬいた。 「やめた方がいい、私に刃は届かぬ」 「ならばこれでどうだ!」  向けたのは弓矢。  キリキリと音がするとシュッと音がしたが、矢は目の前で止まった。  玉座に座るものは、指で矢を払いのけると、カランと乾いた音ともに下へ転がり落ちました。 「馬鹿か?」 「なんだとー!」 「そこまでだ!」 「お前らの相手はこっちだよ!」  振り返る二人の前には二人の王子の姿。 「エディッシュ、やりすぎたようだな」 「なんだ、生きていたのか?なんのことだ?」 「知ってんだよ、叔父上が何をしようとしているか」 「そしてあなたがそのあと、王を殺し、この世界の頂点に立とうとしていることもね、白い狼のかしら、エディッシュ」 「なにを言う、私はそんなこと!」 「エディッシュどういうことだ?私を殺す?どういうことだ!」 「王様、ウソです、ここにはいない二人、死んだものです、殺しても何も言われません」 「はっ、いまさら、叔父上、今ここで、死んで詫びろ、両親はそれでも許しはしないだろうがな」 「メグとジュリアンを返せとは言いません、ですが、敵は私がここで取らせていただきます」 「うるさい、うるさい、うるさーい!お前らごときにこの命差し出せダと笑わせるな!お前ら全員殺して、われはこの世界の王になるのだ、誰にも邪魔はさせん、シネ―!」 パン、パン、パン。 手を叩く音が部屋に響きます。 「どーでもいい身内の争いはそこまでにしてくれ。種のない男に、この先数年しか生きられないいのちで、何も関係ない民を殺されるのは心外だ。高々人生七十年、なにを望む、長生きしたところで、おいは体を蝕み、この先、いいことなど何もないものを」 「黙れ、黙れ、黙れ!そこをどけ!そこは!」 「ここは?ただの椅子だ、どうぞ―、私がほしいのはこんなちんけな椅子ではないからな」 何だとー! 「お前、名を名のれ、さっきから何も言わぬのは卑怯ではないか?」 「はあ?そっちも名のらないのになぜ名乗らねばならぬのだ?」 「早く言えー!」 エディッシュが突進してきました。 バフっ! 「なんだこれは?」 「はい残念、だからったでしょ、刃はここまで通らないって、仕方がないなー、冥途の土産に聞かせてあげましょうかね」 頭に巻いたものを取りました。 長い黒髪が流れ落ちます。 「泥棒は美しく、泥棒は神の加護ありき、その名はル・ラータ。黒髪の魔女ヴァレッテリア、彼女が千年の呪いをかけたのは自分自身。だが、よその世界から来た稀びとを面白く思わなかったものがいた。 時の王、エルーベジュー四世」  え?稀びと? 「ヴァレッテリア、本名バァレット・テリー、私と同じ世界から来た彼女、王は、その知恵を妬み、民から信頼の厚い彼女を殺した、愛するがゆえにね」 どういうことだ?
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