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「そして今やこの国を奪う勢いである商人の名前がこの王都にも届いた、その名は?クリバヤシグループ。そしてその総裁ルシアンは二つ名を持っている。
そう、ヴァレッテリアと同じようにね。彼女の功績は、国中に残っていた、そこに私のようなものが名前をつけられたら困ると思ったのよね?ル・ラータは民が困っているところに現れる、だからおびき出した、王子を使ってね」
ルシアンをおびき出しただと?
「隠れてないで出てきたらどう?白い狼のかしら、カール大佐?」
カールだと?
カツンと音がして、彼が悠々と入ってきました。
「この国を手に入れるため王様の親愛なる部下としてその手腕発揮していたのに、最後の詰めが甘かったわね」
「はん、女事気に最後に見破られるとは」
「どういうことだ?」
「われらの味方ではないのか?」
「そう見せかけていただけ、なんかおかしいと思ったのよね、こっちの味方かと思えば、そっちにも加担しているみたいで、かといえば王妃様にも、そうなると見えてくるのは自分が有利に立ちたいからよね?王になってなにをしようとしているかは聞かないわ、この国は私がいただく!」
「おぬしになどやらぬ!」
「いただくのは私だ!」
「はい、はい、身内の事よね、どうでもいい。ねえ、ル・ラータ覚えた?過去の王、ヴェルトよ、降伏しろ。この国は我、ル・ラータがもらい受けた」
「お前のものではない!」
「あんたのものでもないわ」
私は頭に巻いてあったものすべてを取りました。
「ク、黒髪!」
「神様に代わって裁きを言い渡す!ヴェルト千年ののろい、今ここに」
ものすごい光がルシアンを包み込みました。
その光を遮るようにします。
魔物たちが、ルシアンの周りを囲みました。
ヒエー!
うわー!
「これは各国の王たちが私をこの国の王だと認めてくれた証文だ、証文好きなヴェルト、しっかりその目で見るがいい」
ばさりと投げ捨てた。
「ハハハ、いまさら、ハハハ」
王はその紙を手に震えていた。
この国……といいかけたとき、エディッシュの剣が王の背中に大きく振りかぶった。
「後ろ!!」
「死ね!」
ザン!
「王様!」
「叔父上!このー!」
エディッシュは笑っていた。
そして、私を見上げると。
「この世界はわれらの手に!」
ふっと見せたほほえみは翻りました。
「リュア!二人とも危ない!」
「しねー!」
ガオー!
ギー!
ガウ―!
私の横から飛び出した魔物たち。
「「ガオー――――!!」」
カール大佐の声もむなしく、小太郎の牙に噛まれていた。エディッシュも襲いかかろうとして、リュアの剣により傷を負った。
だが、彼は自らの手により命を絶った。
切った王に覆いかぶさる姿は、最後まで王様を守ろうとしていた姿に見えた。
目の前がにじんで白くなる。
「ごめん」
「ルシアン」
「ごめん、ほんとゴメン」
「未来……」
エルの手は私を胸に抱きしめました。
私は彼の腕の中で、こんな結末になるなんて思わなかった事を泣きながらわびました。
呆然と見渡す部屋は、真っ赤に染まっていきます。
飛び込んできたシュエル隊長たちはそれを見て座り込んでしまわれたのでした。
すまぬという王子たちの声ですが、まだこれからです。
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