第八話 ネズミ大作戦

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王妃がつかまった事で逃げ出すものたちは一斉にメルクへ向かっていきます。王子たちは慈悲を与え、この国から出て行けといわれたのです。 王妃たちは、生きたまま、メルクへ送られますが、彼らはこの先、生きていけるかどうかはわかりませんけどね。 その頃メルク国の兵士たちは列をなしてこの国へ向かっていました。 何でと思うでしょうが、これ、予定にあったことなんです。 馬に乗った兵士に囲まれ歩くのは、防具もつけず、鎌や鍬などを持った平民です。うな垂れ、この先の未来は明るいものだとはだれも思っていません。 「おい、読んだら誰かに渡せ、上のもんに見つかるんじゃねえぞ」 側に来たのはほこりまみれのブラザーでした。 なんだよ? そこに書かれていたのは、家族を開放し、南へと逃げたこと、もう、王様におびえ、兵士として死にに行かなくてもいいことが書かれ、明日、最後の泊まる場所で一斉に逃げるように書かれていたのです。 嘘だろ? 裏を見ろ。 裏? そこにはネズミの絵。ただその絵には、あるものが描かれていました。 男は涙がにじんできました。胸をしっかり握りしめると、そばに居る同じ境遇のものに見せるのでした。 見つかればみんな死にます、どっちに行っても死ぬのなら、生きる方を選びます。 気が付けば、彼らの周りにはシスターやブラザーが囲うようにしていたのでした。 「準備できた?」 できたよ。 子供たちにあるものを作ってもらいました。 掌に入る程の石を拾い集め、ネズミの絵をかいてもらったのです、しっぽにはカラフルなリボンをつけて。 「ネズミの絵の石?ああ、ネズミ石ですね。メルクの田舎のほうでの言い伝えです」 言い伝えですか? 本当はメルクの国でのおまじないだったそうだ。 旅に出た人が無事に帰ってくるように、かばんに縫い付けられたリボンは、いつの間にか兵士となった人たちが無事に返ってくるようにと家族が衣類に着けるようになったそうだ。 そしてその石はリボンと同じ色を石に塗っておいたを家のそばに置いた。家の目印だ。それがいつの間にかネズミの尻尾にリボンを書き始め、置かれるようになったそうだ。 戦争の絶えない国、男の子が生まれると、兵士に持っていかれる、だから母親は、女の子が生まれたとうそをついた。 いつしかそれが広がり、男の子はこの家にはいないという家が増えた。 ネズミは子沢山の象徴で、女性たちは、そのネズミの尻尾にリボンをつけて、子供たちを戦場につれていかないでと願うそうだ。 ただその願いもむなしく。前王と元王は生まれた子供は男も女も兵士として年頃になるとみんな連れて行ってしまうようになってしまった。 いつしか、戦場に行った者たちが無事に帰ってきてという願いのリボンは邪魔にならない胸の裏側にしっかり縫い付けられるようになったそうです。 教会は、メルクへの参入を拒み続けていました。一度入ったら二度と出てこられないからです。ですが、王様は金を使い、教会関係者をうまくいいくるめ、隠密、殺し屋として表に知られないようにしていたのです。メルクにいた教会の人たちで抵抗していた人たちの奪還は、あちこちから集まった仲間たちによって行われました。 その夜、メルク兵たちは、食事をとり、上の兵士たちに見張られながらも様子を見て眠りにつきました。上の兵士たちは明日になれば勝利は見えていると集まり祝杯をあげたのです。 どこからか、こそこそ声がすると、足跡を立てないように人が森の中へと入って行きます。 兵士たちはぜったに起きないという声が広がっていきます。 手で合図する人たち、人々は一斉に逃げたのでした。 そして朝になりました。 まだ日は登っていませんがそれに気が付いた時遅く、メルク兵士たちは、相手国に囲まれていたのでした。 各国から集まった兵士たち、残したもの意外はそのままメルク国へ入ります。 北から回りこんだ部隊は、南で兵が集められているのがわかったため、背後から近づき、一掃、そのままメルク国へなだれ込みます。 走ってくる馬。 そこには、各国の旗がはためいています。 「平民を傷つけるな!」 「狙うは王、メルク十五世!城へ、邪魔するもの以外は、道を空けろー!」 民は逃げまどいますが、道を空けます。 中央突破です。 その後ろには各国の王、王子たちが兵士たちとともに真直ぐ城へと向かっていくのでした。
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