第二章

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 美しいと思ったのだ。あの昼の海を。そして今初めて見る夜の海もまた、昼とは違った魅力を宿していた。  自分が降ろされた場所がどこだか分かったアウロラは、驚いたように目を瞠っていた。アスカは彼女の言葉が紡がれるのを待っておく。別に高所恐怖症であったわけでもないだろうし――灯台の展望台から海や町を見ていたくらいだ――彼女がここまで絶句する理由が、アスカにはわからなかった。  けれどじきに、アウロラも隣にアスカがいることを思い出したらしい、はっとこちらを見て、照れ隠しのように「ごめんなさい」とはにかんだ。 「――アスカはやっぱり魔法使いね」 「?」 「ここなの。私が、アスカを連れてきたかった場所。私が、夜の海を見るのに好きな場所」  町の街灯や家々に灯る明かりと空に灯る星々はどこか呼応しているようで、地上と空を華やかに彩っていた。  綺麗でしょう、と言うアウロラへ、アスカはただひとつ頷くだけにとどめた。 「私の心を読んだの?」 「まさか。本当に偶然だよ。アウロラだって、俺が抱えなくても空くらいは飛べるんだし」  変わらないよ、とアスカは小さく笑みを見せた。本当に、自分と彼女は何も変わらない。他愛のない話をしていても、本当にそう思う。 「……私が願えば、なんでもできるの?」 「そうだよ。ここはきみの夢だから」  アウロラは少し考え込むように顎に指を当て、そのまますっと足元を指差した。そのまま宙をなぞるようにスライドさせると、現れたのは少し古めかしいベンチだった。長く使い込まれている年季は感じさせたが、決して汚らしいわけではない。大切に手入れをされているように見えた。
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