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食事を終えて食器を洗浄機へ持っていくアスカの背中に、管理AIからの声が降りかかる。
✻✻✻✻✻
「――長すぎじゃないか?」
誰に問うでもない言葉が、するりとこぼれ落ちた。
アスカの目の前には、昨晩入り込んだあの広大な夢景色が広がっていた。名残惜しい気持ちを抑えきれず、夢の泡があった場所まで飛んできてみたのだ。
すると、夢の泡はまだ消えることなくそこにあった。とはいえ、
アスカが今朝この夢を抜け出してから、かれこれ十八時間は経過している。
人間は夢の続きを見ない。それぞれの夢は醒めればそこで終わる物語だ。
そうなれば、この夢の宿主はずっと夢を見続けている、ということになる。
少し首をひねりながら、アスカは夢の中へと入り込んだ。
今日降り立ったのは、昨日この夢から抜け出した場所、波が打ち寄せる白い砂浜だった。相変わらずの眩しさに一瞬目がくらむ。太陽を遮るように手をかざし、目が慣れるまでしばらくそのままにしている。
ジリジリと肌を焼く陽の光から逃れるように、アスカは町へと足を向けた。屋根のある場所について、ひとつホッと息をついた。
まさか再び同じ夢の中に入れるとは思っていなかったから、これからどうしようかと少し悩む。
けれど、この夢から離れがたく思った昨日の記憶も鮮明だ。今日は、昨日回れなかった町の中を重点的に見て回ろうと思い、しれず弾む心の赴くままに足を踏み出した。
人のいない町は廃墟のように、どこか薄ら寒い気配をまとっているものかと思っていた。
けれど、この町はどこへ行っても美しく、手入れが行き届いていて居心地が良かった。
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