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下界にお遣い
◼️自己紹介◼️
韋駄天「なにやら神様、俺たちの日常が声劇になったらしいぞ?」
神様「ヘ〜、そいつは楽しみじゃないかい。ところで、ここにあった恋愛は愛嬌って本を知らないかい?」
法師「さぁ〜、私はみてませんね? まるまると太った白豚はお見かけいたしましたが……」
白豚「………ぶ、ぶにゃ〜ぁ~ん!」
門番「10時22分天界門、白豚一匹通過っと。交代の時間まであと5分………長っ…」
読み手「ん? これはなにかの台本ですかね? えーとなになに? 韋駄天、神様の恋愛小説を読む? 恋愛に皆無な韋駄天はちんぷんかんぷん? どういうことでしょう?」
◼️本編◼️
韋駄天⇒韋
神様⇒神
白豚⇒白
法師⇒法
門番⇒門
読み手⇒読
【韋-1】「恋愛?」
【神-1】「ソレは甘くて美味しい飲み物の事かい?」
【読-1】「疑問に疑問で返す律儀さと、絶対に噛み合わない会話は日常茶飯事のこと。だが、交差しない会話は暑さでやられた脳には非常に厳しい状況だ…」
【韋-2】「…甘くて美味しい飲み物ならさっき飲んだだろ?」
【読-2】「呆れて返すが…」
【神-2】「ああ、人が人と好き合うアレの事かい?」
【読-3】「なんの解答なのかも定かではない問い掛けが、続いて返ってくる」
【韋-3】「いやいや、意味がわからないのだが…? 聞いてんのはこっちだ!…」
【読-4】「と頭を垂らしても、なんのその…」
【神-3】「そうかい? 言われてみたが…、飲んだような…、飲んでないような…。記憶が曖昧だ…」
【読-5】「と首を傾げられても、返事に困る…」
【韋-4】「大概だな…」
【読-6】「肩を落とし、なくなく甘くて美味しい飲み物を用意しに重い腰を上げた」
【韋-5】「…確か…、厨子に福屋の饅頭がまだひとつ残ってたな…」
【読-7】「と、お茶請けの心配までしてたら。不意に…」
【神-4】「韋駄天や!」
【読-8】「待てと、云わんばかりに引き止められた」
【韋-6】「どうした、神様? 気でも変わったか?」
【読-9】「と振り返れば、これ以上ない真顔に嫌な予感しかしない。口端あたりが、ヒクリと引きつる」
【韋-7】「まさか、東屋の金平糖が食いたいなんて言うなよ?」
【神-5】「やはり感が良いな、韋駄天よ」
【韋-8】「感って言うな、福屋の饅頭でいいだろ?」
【神-6】「おや、それは韋駄天のおやつじゃないのかい?」
【韋-9】「いやいや、そんな気遣いいらないから。今から下界に走るよりかは断然いい!」
【読-10】「というが、福屋の饅頭を楽しみにしてたことは間違いない。間違いないが…、上から目線で」
【神-7】「譲ってやる」
【読-11】「と、いわれるのは釈然としない」
【神-8】「遠慮するな。東屋の金平糖で手を打ってやるといっておるのだ。いってこい?」
【韋-10】「はぁ? いってこいじゃないだろ? おねがいしますのひとことくらい言えよ!」
【読-12】「と、がなれば、してやられた」
【神-9】「そうか、そうか。ここはひとつ韋駄天に願おうじゃないか? 東屋の金平糖が食べたいのだが、お願いできるかい?」
【読-13】「などと頼まれりゃ、いくのが決定付けられるだろが!」
【韋-11】「くっ〜」
【読-14】「こういうときこそ、ほんと底意地が悪い」
【韋-12】「会話が噛み合った時点で警戒すべきだった…」
【読-15】「と、歯ぎしりしてももう遅い」
【韋-13】「わかった…。二言はない…」
【神-10】「これは楽しみだ♪ よろしく頼むよ♪」
【読-16】「笑顔で労われても嬉しくもない」
【韋-14】「労うな!」
【読-17】「…もっと気を引き締めないと駄目だな…と、気合を入れ直し」
【韋-15】「これっきりだからな!」
【神-11】「かなしいこというなよ、韋駄天」
【韋-16】「……ぅ!」
【読-18】「経験が乏しいということもあるだろが」
【韋-17】「嫌!」
【読-19】「ともいえないのが本音で悔しい…」
【韋-18】「あゝもう、わかった、わかった。わかったから、そんな顔するな!」
【読-20】「つくづく甘いな…と反省はするが、こめかみあたりの太い血管がドクンと脈打たされるのはホント頂けない…」
【神-12】「ほんとうかい、もうこれきりって言わないよね?」
【韋-19】「それは…、…いうかもしれないが、無茶振りはもう聞かない!」
【神-13】「あゝ、それはわかった。努力はしよう」
【読-21】「にこにこと頷くが、どこまで信用したら良いのか…」
【韋-20】「胡散臭いな。ま…、無事、天界門を通れたらいいが…」
【読-22】「遠い目で、天界門にいる門番の顔を思い出す。あの門番さえいなければ、そう面倒な遣いでもなくなる。前回、門番が絡んできてうざいと報告はしたが、…それがどこまで改善されたのかは知る由もないのだ。下手すれば、改善されていない可能性だってある。世知辛い世の中だ」
【韋-21】「あゝ、気が重い。重い、重い、重い、重い、重い…」
【読-23】「…と、連呼してたら、神様の気まぐれが一番、たちが悪いのではと気づく」
【韋-22】「無法地帯め……」
【読-24】「睨み付けるが…」
【神-14】「どういう意味だい?」
【読-25】「と、いう我関せずの…」
【神-15】「ん???」
【読-26】「を、頂く」
【韋-23】「なんでもない。神様はお気楽だなと思っただけだ…」
【読-27】「皮肉をいえばそれなりに気分がよくなるだろという根本的にはなにも解決してない蛇の道を通る」
【神-16】「そうかい? 遣いが嫌なら草むしりでもするかい?」
【読-28】「と、心優しき無茶振りを頂くが、聞かなかったことにする。向けられた先の庭がむしるという単語ではおさまりきらない状況なら、目を反らしたくもなるだろ。すんとすまし、心がこもってないみえみえの拒否反応を示す。ここにきて」
【神-17】「草むしりもやれ!」
【読-29】「と、丸め込まれたらお終いだ」
【韋-24】「神様は東屋の金平糖を所望したいのじゃないのか?」
【読-30】「だが、望まないことに嘘をつくという行為ができないから」
【韋-25】「遣いにいってくる」
【読-31】「と、さっさと下駄をはくくらいだが…」
【神-18】「おや、聞こえなかったのかい? 残念だ…」
【読-32】「と、首を横に傾けられても聞き入れたくないものは聞き入れたくない」
【韋-26】「いや、聞こえてるが…、東屋の金平糖はどうするのだ? 甘くて美味しい飲み物を飲みながら食いたいのだろ?」
【読-33】「と、パタパタとかっぽうぎをたたむ。遣いだから、いつもの軽装でも差し支えはない。かっぽうぎを縁台におき、振り返ると真顔が間近にあってビビる」
【韋-27】「どうした、神様?」
【読-34】「尋常じゃない距離に、後退りをするが…」
【神-19】「韋駄天、草むしりと東屋の金平糖、どっちが大事だと思ってるのだい?」
【読-34】「ずずっと詰め寄られる」
【韋-28】「なにがやりたいのだ!」
【読-35】「と、突っぱねる」
【韋-29】「言葉を返すが、神様!」
【神-20】「なんだい!」
【読-36】「だが、秒殺の即答に思わず、困惑する」
【韋-30】「………っ!」
【読-37】「怯むな! こんな調子でほいほいと雑務を投げつけられたら身がもたない! この期に生じてあらゆる雑用を放り投げてくるのはもう目に見えてるのだ!」
【韋-31】「もう無茶振りはしないのだろ?」
【神-21】「あゝ、確かに…」
【韋-32】「だったら、草むしりの間に誰が神様の遣いをするっていうのだ?」
【神-22】「ん~ん、考えていなかった…ねぇ…」
【読-38】「と、腕を組んで唸るが、草むしりをなかったことにはしないようだ。云った手前、なかったことにできないのはわかる。わかるが、性分だという理由で頑なになってもらったら困る…」
【韋-33】「兎に角、東屋の金平糖買ってくるから、その間草むしりしながらよく考えな?」
【読-39】「優しく諭し、庭石を渡る」
【神-23】「これこれ、待て!」
【韋-34】「いやいや、帰ってからじっくり聞くから! 草むしりは任せたからな!」
【読-40】「と、打ち切って、手を振る」
【神-24】「仕方がないな…」
【読-41】「追ってこないのをいいことに、良い方向に解釈する」
【韋-35】「しかし、なんだ。正直、ここまで会話が成立したのは過去最高記録だな…。このまま継続できたなら苦労は半減するだろが、…そう簡単にはいかないだろ…」
【読-42】「などと、息をつきつつ柏手を叩いて門柱をくぐり抜ける」
【神-25】「ほうほう、これはまた随分と成長したではないか? なら、これもどうだい?」
【読-43】「と、感心し逆算で柏手を打たれたら」
【韋-36】「はぁ?」
【読-44】「と、その場で立ち止まって呆けるしかない」
【韋-37】「…ぉいおぃ、無茶振りはもうしないのじゃないのか…?」
【読-45】「というのは、ホント愚問だ」
【韋-38】「なにがしたいのだ!」
【読-46】「破った結界の上に、結界を紡がれてイラッとする」
【神-26】「ん? 話を聞かぬ、韋駄天が悪いと思わないかい?」
【読-47】「にたにたと笑って、ツイツイと草むらに視線をおく。なにがいいたいのかはわかったが、腹が立つのはどうにも治まらない」
【韋-39】「だ〜ああああああぁ!」
【読-48】「地団駄を踏むこと数秒。ぱにゃんという音とともに現れた白豚をみて、神様がニタリと笑う」
【神-27】「ほうほう、これはまた随分と成長したではないか?」
【読-49】「数分前に聞いた台詞とまるっきし同じ言葉なのに、まったく持って嫌味にしか聞こえない…。だが、まるまると肥った白豚がぼてんぼてんと腹打ちしながら現れたら、そう応じるのが自然な流れだ。神様の視線が不快だが、この白豚以外に適役もいないから仕方ないが…」
【韋-40】「──そうだな…。どこかの構ってちゃんが甘たれたこと吐かすから、肥えたのだろよ」
【読-50】「皮肉っぽく返し」
【韋-41】「遠慮なく食い尽くせ!」
【読-51】「と、命じる」
【白-1】「ぶにゃ~ぁん♪」
【読-52】「雄叫びらしい声を上げ、草むらに全力でかける姿はさすが獣魔って感じだ」
【韋-42】「しっかし、結局、草むしりも遣いもすることになったな…」
【読-53】「と、ひとりごちる」
【神-28】「こりゃ可愛らしい構ってちゃんだ。草むしりが上手にできたらよしよししてやろじゃないかい?」
【白-2】「ぶにゃ~ぁん♪」
【読-54】「危機感もなく、もしゃもしゃと頬張る草をぶんぶん振り回し、嬉しそうに頷く白豚の仕草がむかつく。まんまるな目と合うと愉快な気持ちになれるのが、せめてもの救いだ」
【韋-43】「ふう~ん、よかったじゃないか? この前まで豚鍋にでもするかっていわれてたのにな…」
【読-55】「残ったモヤモヤをぶつけたら…」
【神-29】「なんだい? 韋駄天もよしよしして欲しかったのかい?」
【読-56】「しれっと痛いところを突かれて、ぐの音もでない」
【韋-44】「…だ、誰が───…」
【神-30】「そう照れなさるな。まぁよい、今日のところは膝枕で我慢しておいてやるから、はよう帰ってこい?」
【読-57】「にこやかに笑って手を振ってくるが、信用はできない。…そもそも、膝枕ってなんだ? 頭撫で撫でと、どう違う? わからないことばかりが増えるいっぽうで、辛い。ってか、こう知らないことが多かったら、敵う相手も敵わないだろ。あ〜あゝ、空回りするばかりでちっとも前に進みやしない! くぞ〜!」
【韋-45】「──神様の馬鹿野郎!」
【読-58】「今は叫ぶので一杯一杯だが、そのうちぎゃふんていわせてやる! 覚えてろ! いつか、絶対に膝枕っていうヤツをしてやるのだ! それも、ぐの音もでないくらい完璧にだ! カラカラと下駄を鳴らし、紡がれた結界を破壊する。二重だろが、三重だろが壊してやろじゃないか! 厄介な門番だって、蹴散らかしてやるのだ! 絶対に三河の豆大福になんかに惑わされないからな! それで、さっさと東屋の金平糖を買ってかえるのだ! と意気込んで天界門を抜けたら、見知らぬ法師にあっさり捕まったのだが?」
【法-1】「これは珍しい、お前さん韋駄天か? 夜桜の綺麗な月夜に不粋なもんしょてんじゃないか?」
【読-59】「と、いいがかりもいいとこのいちゃもんまでつけられて」
【韋-46】「うがっ! 離しやがれ!」
【読-60】力任せに首根っこ捕まえられたら、これはもう泣くしかないだろ」
【韋-47】「あ、こら、神様から貰った錫杖返しやがれ!」
【法-2】「おや、小振りなくせに腕力だけはあるな?」
【読-61】「奪われた錫杖にしがみつくが、ペリっと上手く引き剥がされる。首根っこ最強じゃないか!」
【韋-48】「くぅう~、離せ! 返しやがれ!」
【法-3】「ほほう、これはなかなかの逸品。お前さん、中島屋の桜餅と交換せんか?」
【韋-49】「はぁ?」
【法-4】「なんなら、三河の豆大福と東屋の金平糖もつけるが…」
【韋-50】「おいおい、そういう問題じゃないだろ?」
【法-5】「そうか、わかった。福屋の饅頭もつけよう。これ以上はまけられん!」
【読-62】「とは言われるものの、喰い物と交換できる代物ではない」
【韋-51】「……アンタ、馬鹿にしてんのか?」
【法-6】「いや、いたって真面目だが?」
【韋-52】「…………ぁ……」
【読-63】「無心ほど日頃の成果がでると聞いてたが、これほどでるとは思わなかった。掴まれた首根っこをするっと剥がし、奪われた錫杖も取り戻す。すたすたと無言で東屋に向かい、無事金平糖を買う。その間、しつこくつきまとわれたが知らぬ存ぜぬでやり過ごした。さすがに天界まではついてこないだろと、天界門を顔パスで潜ろとしたら門番に引き止められる」
【門-1】「ちょいと、お連れさんのパスがないんだが?」
【韋-53】「いや、連れじゃないぞ?」
【読-64】「首を横に振って否定するが、ぴったりとくつっかれたらひっぺかえせない。なんてしつこいんだ!」
【韋-54】「離れやがれ!」
【法-7】「いや、そこはなんとかこの錫杖に免じて」
【韋-55】「免じられんわ!」
【法-8】「そんな…」
【韋-56】「当然だろが!」
【読-65】「そもそも錫杖を譲った覚えもない」
【韋-57】「なに勝手に、私物にしてるのだ…」
【法-9】「ぃや…、つい、出来心で…」
【読-66】「にへらっと笑うが、夜桜の綺麗な月夜で佇んでたあの法師はどこへいった?」
【韋-58】「…物欲って…怖いわ…」
【読-67】「そう呟き」
【韋-59】「これ、従魔なんで登録よろしく!」
【読-68】「などと蔑んでもへらへら笑ってるから、怖いことこの上ない」
【門-2】「あゝ、じゃ、ここに名前と種族書いて─」
【読-69】「面倒事には携わらない主義らしく、あっさりと手続きに入るあたり、いい加減だ。従魔登録の用紙に適当な名前と種族を書いたら、顔パスで通れるのはいいが、従魔登録って怖いんだなっていうのも垣間見る」
【法-10】「あっ、韋駄天さん、お荷物お持ちします!」
【読-70】「態度から物言いまでころっと変わるとは、ホント悪用し放題じゃないかと思うほどに…。だが、錫杖をみた瞬間の顔は忘れない」
【韋-60】「錫杖は渡さないからな!」
【法-11】「なにをおっしゃいます。韋駄天さんに持たすわけにはいかないでしょう?」
【読-71】「にこにこと笑う顔が胡散臭いたらありゃしない」
【韋-60】「余計なお世話だ!」
【読-72】「と翻すと、歩く先から地響きがする。聞き慣れた」
【白-4】「ぶにゃ~ぁん!」
【読-73】「という雄叫びが聞こえたら、これはもう確信するしかない」
【神-31】「おやおや、賑やかなことじゃないかい?」
【読-74】「賑やかなのはそっちだろ? と思いつつも…」
【韋-61】「なんで、神様?」
【読-75】「と、呆けた顔で返す。草むしりを命じた従魔がまるまると肥った巨木になってるのは想定内だが、その巨木と連れ立って歩かれたら驚くだろ?」
【韋-62】「散…歩か、…珍しい…な?」
【読-76】「屋敷から出ることじたいが珍しいからついつい身を出す」
【法-12】「危険です! 韋駄天さん!」
【韋-63】「いや、…それ錫杖だから…」
【読-77】「庇った素振りでちゃっかり錫杖に手をつけるから、油断もすきもない。巨木は巨木で」
【白-4】「ぶにゃ~ぁん!」
【読-78】「ご主人さま! 助けてください! などという顔で再突進までしてくるから、錫杖を守りながら避ける。どどどっと通り過ぎる従魔を横目に」
【法-13】「まったく危険な生き物ですね! 成敗せねば…!」
【読-79】「法師がすすっと印を構える。かろうじて真顔だが、美味しそうな豚肉♪と書かれた目は隠しきれてない」
【白-5】「ぶにゃ~ぁん!?」
【読-80】「瞬時に殺気を感じたのか、さらば、ご主人さま! と自ら退散する。あの巨体が一瞬で消えた。さすが逃げ足だけは早い」
【神-32】「まだ豚鍋にはなりたくなかったようだね…」
【読-81】「ほんわか、いうが、とても聞きたくない内容だ。ってか、まだ喰う気だったのかよ、諦めろよ神様! しっかし、よく逃げ切れたな、白豚!」
【法-14】「そうですね、惜しいところでした…」
【韋-63】「いやいや、お前まで加戦するなって…」
【読-82】「白豚、お前の屍は拾ってやるからな!」
【神-33】「ところで、韋駄天。彼はどちらさまだい?」
【法-15】「あゝ、申し遅れました。韋駄天さんの従魔、ミツミツと申すものです。人族ですので、御手柔らかにおねがいします」
【読-83】「など、従魔登録の書類に書いた文面をすらすらと読み上げるから、文字読めるんだなと感心はする。だが、関心・興味はない。礼儀正しく神様にお辞儀までしてるが、どこまで本心だか…」
【神-34】「おやおや、これはこれはご丁寧に。私は韋駄天の養父で、天界では神様をしております」
【読-84】「神様も神様で従魔に頭を下げるあたり、懐が広いのだなと感心してたら、急にずいずいと腕を引っ張られる」
【韋-64】「ん? どうした、神様?」
【神-35】「…今度はどこで拾って来たのだい?」
【韋-65】「はぁ? 拾う?」
【読-85】「河童や猿みたいな可愛いらしい生き物を拾ってきたような物言いに一瞬カチンときたが、断じて拾ってきたわけではない」
【韋-66】「違う違う、勝手についてきたんだって。錫杖をくれってしつこいのだ」
【読-86】「こそこそと法師に聞こえないように耳打ちし、これまでの経緯はもちろん、神様から貰った錫杖を渡したくないとまでいって、ようやく納得してくれた」
【神-36】「なるほど、またえらいもの拾ってきたのでは?…と思ったじゃないかい」
【韋-67】「な、変ないいがかりつけるなよ。そうしょっちゅう拾ってきてない! 河童も猿もかわいいじゃないか!」
【読-87】「といっても、結局元の場所に返して来なさいって言われて返してはきたが、ときどき様子を見に行ってるとはいわない」
【神-37】「それじゃ、元の場所に返せるかい?」
【韋-68】「返したいのは山々だが、しつこいから返せれないかもしれない」
【読-88】「この錫杖を渡せばすぐにでも帰りそうだが、お気に入りだから渡したくはない」
【神-38】「それは…困ったね。…この経典で手を打ってくれたら有り難いのだが…」
【韋-69】「経典?」
【神-39】「あゝ、仏の有難い言葉を綴った巻物でね…。写しはたくさんあるからひとつやふたつあげても問題はないのだけど…、興味がなかったらただの紙切れだからね…」
【読-89】「と、悲しいことをいう」
【韋-70】「聞いてみればいいだろ? 字は読めるようだし…」
【読-90】「書類に書いた文面をすらすらと覚えてるくらいだ。経典くらい簡単に読めるだろ?」
【韋-71】「おい、ミツミツ、これやるから錫杖諦めて帰れ!」
【読-91】「経典をふたつほど手渡し」
【韋-72】「ほれ、帰りな!」
【読-92】「と、天界門をさす」
【法-16】「…、はい?」
【読-93】「きょとんとした顔で、法師は経典の中を見る。あ、そこらはしっかりしてるのだな…」
【法-17】「……ぉ、これは…。よろしいのですか?」
【読-94】「なぜ、敬語? もう従魔ごっこはしなくてもいいだろ? と首を傾げるが…」
【韋-73】「あゝ、錫杖諦めて帰ってくれるのなら、やる!」
【法-18】「本当にですか?」
【韋-74】「あゝ、二言はない!」
【読-95】「なんだ、この素直さ…。…難しい字は読めないが、経典だけあって凄いことを書いてあるのだろと深く考えないようにする」
【韋-75】「じゃ、達者で暮らせ!」
【読-96】「にこやかに手を振って見送ったが、ちゃんと下界に帰れたかと心配になって、後日こっそりと様子をみにいったら、昔拾った河童と猿を仲間にし、なぜか食糧としてしかみてなかった白豚までを仲間に加え悪党退治をしてた。神様にいおうかいうまいか迷ったが、豚鍋になるよりかはマシだと思い言わずにおいた。さて、あの後、神様と一緒に屋敷に帰ったら、なにも残ってない更地には驚かされたが、膝枕というものがすべてまるく解決してくれた。あと、おねだりや無茶振りなどもこの膝枕が解決してくれることも知ったし、他にもいろいろと活用できるかもと日々精進し学んでる。今日も今日とて、偉大なる養父に膝枕をしながら東屋の金平糖を甘くて美味しい飲み物と一緒に頂き、新たな屋敷を早急に建設中である。
END
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